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新アザン染色法-飽和ピクリン酸アゾカルミンG染色液-

龍見重信、松尾 郁、東 千陽、渡邊拓也、鈴木久恵、竹内真央、田中京子、西川 武

奈良県立医科大学附属病院 病院病理部


【目的】アザン染色における媒染剤は、故渡辺先生によって考案された10%重クロム酸カリウム10%トリクロル酢酸等量混合液(渡辺媒染剤)による媒染処理が、最も標準的な手法として普及し、その有用性については言うまでもない。しかし、クロム酸の発癌性の問題から、クロム酸代替法として、ブアン液による媒染の有用性も言われている。今回我々は、アザン染色におけるブアン液の有用性を検証するとともに、染色時間や染色工程の検討を行った結果、美しいカラーコントラストを持ち、かつ染色時間の短い新しいアザン染色を考案したので報告する。
【材料および方法】ホルマリン固定が施された肝臓(手術および解剖症例)ならびに心臓(解剖症例)を用いた。アザン染色は、脱パラ、洗浄、媒染処理、洗浄、0.1%アゾカルミンG(Chroma)室温60分、洗浄、5%リンタングステン酸室温30分、洗浄、マロリー アニリンブルー・オレンジG染色液(武藤化学)室温15分、分別、脱水および透徹の順で行った。媒染処理は、渡辺媒染剤、ブアン液、ならびにブアン液の組成濃度別に作製した飽和ピクリン酸水溶液、ホルマリン水溶液および酢酸水溶液を用いた。また新アザン染色として、脱パラ、洗浄後、飽和ピクリン酸アゾカルミンG染色液(飽和ピクリン酸100mLにアゾカルミンG 0.1g溶解)60℃30分、洗浄後、アザン染色リンタングステン酸以下同様の順で行った。
【結果および考察】ブアン液や飽和ピクリン酸水溶液による媒染処理を施したアザン染色では、アニリンブルーの細胞質への共染が抑制され、細胞質の赤色と膠原線維の青色がコントラストよく染色された。また、飽和ピクリン酸アゾカルミンG染色液を用いた新アザン染色でも同様に良好な染色性が得られた。本検討より、飽和ピクリン酸を用いることで媒染と染色工程を同時に行うことが可能であると判明し、その結果、短時間で工程の少ない染色法が確立された。


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