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病理検査を取り巻く環境

小松京子

がん研究会有明病院臨床病理センター


 病理組織技術研究会(以後、“本会”とする)は故渡辺恒彦先生が病理技術の安定と発展を願って橋本敬祐先生・武石詢先生・福島範子先生らと発足させた研究会で、当初は組織技術研究会と称していた。ホームページにも記載されているが、“同じ道に苦労している者同士が集まって知恵を出し合ったり、一緒に新しいことを勉強したりすることができたら、それは有益なことだとお考えにはなりませんか。”という渡辺先生の言葉はそのまま引き継がれ、1975年会員制に会員187名であった本組織は、2016年現在会員563名の組織として、現在も病理技術の情報交換の場として活動を継続している。初期のころの研究会は、新しい情報の共有や染色技術の検討などがメイントピックスであった。現在我々病理業務に関わる臨床検査技師は、専門職者としての技術を見につけ、新しい情報を継続的に取り入れるだけではなく、病理標本作製技術の品質保証システムを構築し、医療安全対策を検討し、法令に従った作業環境管理を行うことが必要となっている。更には個人情報保護法や、医療倫理・試薬管理・感染対策などにも精通しなければならない時代である。
 医療の質と安全確保は国民の願いであり、厚生労働省では平成14年に病院および有床診療所に、平成15年4月には特定機能病院および臨床研修病院に医療安全管理体制を義務付けた。平成18年4月の診療報酬改定では、医療機関における専従の医療安全管理者を配置していること等を要件とした医療安全対策加算を新設した。今年度、臨床検査室におけるISO15189等の国際認証取得施設には保険収載が認められたことは、まだ記憶に新しいところである。検査室における医療安全管理ならびに内部・外部精度管理,職員教育などは、以前から推奨されていたものではあるが、それらが文書化され、systematicに実施されることが重要であると捉えることができる。さらには、個々の職員の力量や昇格基準も明確にする必要がある。日本臨床検査同学院の1級・2級臨床検査士資格試験認定や、2015年に立ち上がった日本臨床衛生検査技師学会と日本病理学会とが提供する病理技師の認定資格などは、病理に関わる臨床検査技師の技術の客観的な証明ともなり得るものであり、取得を目指す技師が増加している。進化するmolecularや遺伝子領域の知識も必須である。病理検査の現状と未来像を、会員の皆様とともに検討したい。


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