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薄切について考える

滝野 寿

名古屋市立大学大学院


 薄切(sectioning)は病理技術の中でも最も経験を要し、精度管理が困難である。標本の質ひいては病理診断に影響を与える薄切は常に歪みのない、要求通りの出来栄えが要求される。技師にとってはミラーセクション、連続切片、10枚飛ばしといった特殊な技術の修得も必須である。
 通常、特別な指定がなければ3µm前後の厚さで薄切されるが、ミクロトームの微動装置の目盛以外にも、ブロック固定の良否、温度によるパラフィンの膨張、操作時間などによって切片厚が微妙に影響を受けるとされている。実際には、薄切された切片の透明感、顕微鏡下で細胞の重なり具合によって切片の厚さを推定しているが、いずれも感覚的でエビデンスに乏しい。標本の厚さを実際に測定するには、共焦点レーザー顕微鏡や、非接触表面・層断面形状計測システム「バートスキャン」を用いた計測法があるが実用的とは言えない。
 今回、用手法とスマートセクション自動薄切装置(サクラファインテック)の比較検討を①~④について行った。
① 薄切にかかる所要時間の影響
② 臓器の種類による薄切切片厚の影響
③ 伸展条件が切片厚に及ぼす影響
④ 自動連続薄切装置で正確に厚さを揃えて薄切した切片における特殊染色・免疫染色等の影響
今回用いた自動連続薄切装置は、「検体取り違え防止」、「技術バラツキの標準化」、「感染症防止」の3点で医療の安心、安全を考える上で最も意味が大きいと考えられた。
 病理技術の中でも、最も自動化の遅れていた薄切も、いよいよ実用化に目途が立った。検体採取からの完全自動化に向けて、さらなる進歩が望まれる。


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