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当院におけるk-ras遺伝子変異の検出状況

池田 聡

土浦協同病院 病理診断部


【はじめに】セツキシマブ、パ二ツムマブは、大腸癌を対象としたモノクローナル抗体製剤である。k-ras遺伝子に変異が起きている腫瘍ではこの薬が効かないことから、この遺伝子変異を調べることは薬の適応を決定するために必須となっている。当院ではこの検査を院内で行っているが、今回その検出状況をまとめたので報告する。
【方法】われわれはSmartAmp法(Smart Amplification Process)を用いた検出を行っており、この方法では代表的なエクソン2のcodon12と13について変異を検出できる。
【結果】2008年より2014年3月までに大腸癌386件に対して検査を行った。そのうちk-ras遺伝子変異陽性例は125件で、陽性率は32.4%となった。当院におけるk-ras遺伝子変異のない切除不能進行再発大腸癌30例に対するセツキシマブとイリノテカン、S-1を併用した当院の第二相試験の成績ではCR2例、PR19例、SD9例でPDは0例で奏効率は70%と極めて良好な成績であったため、当院でのk-ras遺伝子変異検査は適正な結果を提供していることが示唆された。また、61例の手術例を用いてk-ras遺伝子変異の有無と腫瘍の病理学的因子との関連を調査したところ、変異例は右半結腸に比べ左半結腸で有意に少ないことがわかった。他の因子で有意差はなかったが、少数の粘液癌や低分化腺癌例では通常型例に比べ変異例が少ない傾向であった。また、検体の材料別に陽性率を調べると、手術標本を用いた場合より生検標本を用いた方が、その陽性率が低くなってしまう傾向も明らかになった。
【考察】当院で行っている方法は抽出したDNA から40分から60分ほどで結果が判明するため迅速性に優れ、院内検査として有用と思われる。今後n-rasなどのさらなる予測因子測定の必要性が予想されるが、一方で腫瘍細胞が十分に含まれる検査に適切なサンプルを供給できるかについても病理検査室には重要な課題と思われる。


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