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鍍銀染色コンペ報告

冨永 晋

防衛医科大学校臨床検査医学講座


 第89回日本病理組織技術学会では染色コンペとして「渡辺の鍍銀法」を課題とした.鍍銀染色はBielschowsky (1904)が銀の錯体を用いて神経線維を染めたことに端を発し,好銀線維の鍍銀染色としてはPerdrau (1921)が前処置に過マンガン酸カリウムとシュウ酸を用いて以降いくつもの改良が多くの研究者によりなされてきた.渡辺の鍍銀法は1959年に本会創設者のひとりである渡辺恒彦先生によって案出された手法である.渡辺の鍍銀法では好銀線維が黒色,膠原線維が赤紫色,核がえんじ色~黒色,細胞質が薄紫色,赤血球がえんじ色に染色される.また,炎症などに随伴して出現する線維化初期の細い線維はマッソン・トリクローム染色などの結合組織染色ではあまり目立たないが,渡辺の鍍銀法ではコントラストが高く染め出され明瞭に観察することができる.それゆえ線維化を伴う疾患の病態把握あるいは腫瘍性病変の鑑別診断のため日常的に用いられている.
しかし,この染色法は染め手が変われば染め上がりも変わってしまう非常にデリケートな染色法である.今回は渡辺の鍍銀法の安定した質の高い標本作りの一助になればと考え染色コンペを企画した.
コンペの方法としては,病理技術研究会で準備した20%中性緩衝ホルマリン固定,パラフィン包埋した肝臓剖検材料の6 µm未染色標本スライドグラスを自施設で普段使用している染色液と染色方法で染色する.染色標本はアンケート回答用紙と共に返送していただいた.
アンケートの内容は次の通りである.
1. どのような種類の酸化液,還元液(前処置),増感液,アンモニア銀液,還元液(銀イオン),調色液,シュウ酸処理液,定着液を使用しているか.
2.渡辺の鍍銀法をどのように行っているか.
3. 鍍銀染色を行う際にどのような工夫をしているのかを記載する.
第89回日本病理組織技術学会では参加協力いただいた31施設の染色標本を供覧し,各施設間における染色結果の違いをアンケートの回答結果と共に解析し報告する.


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