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加熱による抗原賦活化処理法は病理組織染色にどのような影響を与えるか

山口 大1 百瀬正信2 羽山正義1

1信州大学大学院医学系研究科
2信州大学医学部付属病院臨床検査部


[はじめに]
病理検査で実施する免疫染色では、抗原抗体反応の反応性を高めるため、加熱による抗原賦活化処理を行う。しかし、一方では核染色の染色性の減弱や、ムチンに対するPAS―アルシアン青染色などの染色性の減弱、あるいはアルシアン青染色による核染色像をもたらす。そこで今回、抗原賦活化処理の組織や細胞の構成要素に対する作用とは、どのようなものか、また、その応用によって病理組織染色における一般特殊染色法の改善法が見つからないか検討してみた。
[材料および方法]
材料は20%中性ホルマリン緩衝液で24時間~72時間固定された検査材料を使用した。染色法の検討は、H.E.染色、アザン染色、マッソン・トリクローム染色、E.V.G.染色、ビクトリア青染色、渡辺の鍍銀染色、PAM染色、PAS反応、AB/PAS染色、アルシアン青pH2.5染色、グリメリウス染色、K.B染色、コンゴー赤染色、ベルリン青染色、漂白法、グロコット染色、キンヨン染色、P.T.A.H.染色などについて行った。
抗原賦活化処理は、MW処理(550W, 25分, 連続照射)、圧力鍋処理(121℃,1分)を用い、賦活化溶液はクエン酸緩衝液pH6.0とEDTAを含む0.05Mトリス塩酸緩衝液緩衝液pH 8.6を使用した。
[結果および考察]
加熱処理によりAzan染色ではアゾカルミンGの染色性が低下し、アニリン青の染色性が増強された。レゾルシン・フクシン染色およびビクトリア青染色では弾性線維および膠原線維の染色性の増強傾向がみられた。グロコット染色では菌体の染色性がやや減弱するものの膠原線維の染色性が減弱し、菌体の選択性が高まった。ワンギーソン染色、渡辺の鍍銀法、グリメリウス染色、ベルリン青染色、キンヨン染色、P.T.A.H.染色などではいずれも染色性の減弱傾向を示した。コンゴー赤染色ではアミロイドの染色性が増強された。
以上の結果から、加熱処理は染色法の改善に効果的に作用する場合や逆に悪影響をおよぼす場合のあることが分かった。


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