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酵素抗体法の多重染色

柳田絵美衣

神戸大学医学部附属病院病理部


 現在、免疫組織化学は病理診断において重要な役割を果たしている。特に、酵素抗体法は、補助的手段として多くの施設で日常的に用いられている。近年では酵素抗体法を用いた多重染色もおこなわれるようになってきている。
多重染色は、同一切片上・同一細胞上で複数の抗原を同時検出することにより、その相互関係を詳細に観察することが出来る非常に有用な染色法である。代表的な多重染色として、蛍光色素を標識物質として用いる蛍光抗体法多重染色と、酵素を標識物質として用いる酵素抗体法多重染色がある。
蛍光抗体法の多重染色は以前から幅広く研究の分野では行われている。基本的な染色工程は少なく手技的にも非常に簡単である。しかし、暗視野顕微鏡での観察のため背景組織の構築を観察するのは困難である。
一方、酵素抗体法の多重染色は、明視野顕微鏡による観察のため、背景組織の構築の観察が可能であるが、抗原の局在が近接あるいは同一の場合は、蛍光抗体法と異なり使用する複数の色素の中間色をとりにくく、色調が重なり合い不明瞭となる。さらに煩雑な手技と費やす時間が長いなどの欠点により本法は敬遠されてきた。
現在では、その欠点を払拭するような発色剤や試薬なども数多く登場しており、多岐に及ぶ選択肢から最も適した染色プロトコールを選択する必要がある。酵素抗体法の多重染色のプロトコールを作製する場合には、染色しようとするターゲット、証明したい抗原同士の関係性、検体(切片)の状態、抗原賦活化処理方法、一次抗体の希釈倍率や力価、一次抗体同士の相性、染色工程など、多くの条件と注意点が存在する。条件や注意点をクリア出来れば、短時間に非常にシンプルな工程で多重染色が可能となる場合もある。
本発表では、いくつかの酵素抗体法の多重染色を例に挙げ、染色手技や注意点を併せ報告する。


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