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動物組織を対象とした免疫組織化学

川井健司

公益財団法人 実験動物中央研究所


 動物組織の免疫組織化学染色を行う場合,対象となるのは実験動物と思われる.実験動物は広義的には,家畜や野生動物も含まれるが,基礎研究分野においては遺伝子統御されているマウス,ラット等を使用する頻度が多い.これらの動物を使い,特定の遺伝子改変を行った疾患モデル動物研究やがん研究が代表的であったが,近年では,iPS細胞などを代表とする再生医療研究における基礎研究に使用されてきている.
ヒト組織を対象として免疫組織化学染色を行う場合には,自己抗体による抗原の検出などを除くと,染色に使用される一次抗体の免疫動物は,ウサギなどのポリクローナル抗体やマウスハイブリドーマなどのモノクローナル抗体など他種動物で作製されたものを使用している.当然ながら内因性ヒト免疫グロブリンとの交差反応性は問題とならない.動物組織において免疫組織化学染色を行う場合の多くは,ヒト組織と同様に他種動物で作製された抗体による免疫組織化学染色では問題なく染色が可能である.しかし,マウス組織においての免疫組織化学染色は,通常の染色方法では一次抗体にマウスモノクローナル抗体を使用する事は,内因性免疫グロブリンとも抗原抗体反応が起きるため良好な結果が得られない.また,多くはヒト組織用の抗体を動物組織に使用する.抗体のデーターシートには陽性細胞などの記載はあるが,他種動物の組織での交差反応性に関しては記載が少なく,ヒト組織と陽性局在等が異なる場合がある.そのため,予備検討として対象となる動物組織の反応性の検証は必須である.
今回,実験動物に使用されるマウスの種類について簡単に解説し,マウス組織で染色方法,抗体の選択の注意点を中心に述べたい.


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