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FFPE切片に対する蛍光in situ hybridization+蛍光免疫染色二重検出法の開発とその応用

池田 聡

土浦協同病院 病理診断部


【背景】近年、蛋白と蛋白の二重検出は改良が重ねられ、日常の病理診断にも用いられるようになっている。その一方で、病理診断における蛍光in situ hybridization (以下FISH法)はその重要性が増しているが、FFPE標本を対象としたFISH法のプロトコルが煩雑で再現性に乏しいことから、日常検査化やそれを応用した検出法の開発が遅れている。われわれはこのような状況の中でFFPE切片を用いたFISH法の再現性を上げる検討を行い、さらにFISHに蛍光免疫染色を重ねる二重検出法を開発して報告した(病理と臨床2011;29(11)1275~1278)。この方法が細胞診標本に対しても有効であることは本学会でも発表した(病理技術2012;76(1)3,19)。また、この方法をDAB等の可視光検出にも応用できるか検討した(日本染色体遺伝子検査学会雑誌2012;30(1)47~51)。最近ではmRNAを標的としたFISHにDNAのFISHを重ねる二重検出も開発した。【方法】この方法での主な改良点は加熱処理に使用するバッファーの変更と蛋白分解酵素処理の省略である。加熱処理にニチレイ社の抗原賦活化液pH9を用いることでその後の蛋白分解酵素処理を省略することを見出し、この前処理法を行なってから蛍光免疫染色やRNAのFISHに続けてDNAFISHを行うことで二重検出を実現させた。【結果および考察】このプロトコルを用いることによりFISH+蛍光免疫染色二重検出ができ、この方法で様々な遺伝子の異常と蛋白の過剰発現を同一の切片上での可視化に成功した。特に、正常細胞と腫瘍細胞の入り混じることがある低分化な臨床検体などでは、腫瘍細胞を切片上で確実に同定した上でその細胞のFISHシグナルを容易にカウントすることが出来た。また、この方法を応用することでRNAとDNAの二重検出も可能であり、HER-2蛋白陽性の胃癌においてHER-2のmRNAの過剰発現とHER-2遺伝子の増幅を同時に観察することが可能となった。このように本法は臨床上広く応用できると考えられ、今後の発展が期待できるものと考えられる。


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