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ビクトリア青による銅染色

林 勇介  杉本正樹  櫻井和也
須藤明美  大和田麻美子  池上雅博

東京慈恵会医科大学 病理学講座


[はじめに]
ウィルソン病や原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)では、銅顆粒が沈着することが特徴とされている。現在、銅の証明にはパラジメチルアミノベンジリデンロダニン(以下ロダニン)染色や、ルベアン酸染色が広く知られている。また、1975年にはSipponenらに、1978年には中沼らによりHBs抗原や弾性線維の証明を目的としたオルセイン染色でも、銅が証明できることが確認されている。今回、そのオルセイン染色と同様に弾性線維の染色に用いられるビクトリア青染色において、銅がどのように染色されるかを検討し、興味ある結果を得たので報告する。
[材料と方法]
材料は、肝臓移植手術時に摘出されたPBC肝臓、肝臓針生検および剖検材料の肝臓を用い、10%ホルマリン水溶液で1晩から1週間固定後、パラフィン包埋し2~3µmで薄切した。これらの組織切片を用いロダニン染色、ルベアン酸染色、オルセイン染色、ビクトリア青染色を成書のごとく行った。また、銅顆粒の証明をするためロダニン染色とビクトリア青染色の重染色を行った。
[結果]
ロダニン染色およびルベアン酸染色で、銅顆粒のみが赤褐色、黒色に染色された。オルセイン染色では銅顆粒は濃紫色、弾性線維は茶褐色に染色された。ロダニン染色とビクトリア青染色の重染色では、後染色のビクトリア青染色の酸化還元時にロダニン染色が消失したが、その同一部位にビクトリア青染色陽性の顆粒を認めた。さらには弾性線維も青色に染色された。
[考察]
今回、ビクトリア青染色における銅の染色性の検討を行い、ロダニン法との比較から銅が染色されていると考えられた。また、ビクトリア青染色は他の方法と比較すると、後染色とのコントラストもよく、なおかつ弾性線維も染色されることから組織構造の観察が容易であった。これらのことから、ビクトリア青染色は銅の証明に有用と考えられた。なお、欧米では銅顆粒の証明にビクトリア青染色が用いられる場合があるが、国内ではほとんど知られていないことからその啓蒙のためにも発表を行った。


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