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迅速に含水試料や液体中試料が観察できる
大気圧走査電子顕微鏡(ASEM:クレアスコープ)の紹介

高木孝士

日本電子株式会社


 光学顕微鏡(OM)は、染色した細胞内の構造を観察できますが分解能は200 nm程度です。走査電子顕微鏡(SEM)は高い分解能を持ちますが、真空中で試料を観察するため脱水・置換・乾燥を含む時間と経験を必要とする前処理が必要でした。そこで、この様な前処理を必要としない、大気圧下で液体を含む試料の自然な姿を簡単に観察できる大気圧SEM(Atmospheric SEM:ASEM)を開発しました。
この装置はSEMを倒立させて下部に配置し、上部にはOMを備えております。その間に細胞培養が可能なASEM専用シャーレ(直径35 mm)を装着し、OMとASEMで同一視野が観察できます。ASEM専用シャーレは中心に電子線透過膜(窒化シリコン)を埋め込んであり、装置からシャーレを取り外して培養室に入れる事も可能です。ASEM撮像時は、電子線を透過膜越しに試料に照射し、試料からの反射電子を取得します。その為に表面構造が明確になる2次電子像ではなくTEMに近い像が得られます。
今回はこのASEMの原理、装置と共に、応用例を紹介します。培養細胞を固定後も溶液中に浸しておくことができるので、抗原性が保持され免疫電顕としての利用が出来ます。また最近の形態学のトピックスの1つである相関顕微鏡として、試料を蛍光染色して蛍光顕微鏡観察した部位をASEMによって高分解能撮像する事も可能です。今後も新たなアプリケーションを開発していきますが、これまでは困難であった試料の観察にも簡便に利用できる装置であると考えております。


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