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透過型電子顕微鏡における代替ウラン染色の検討―自施設での使用経験について―

矢野哲也

慶應義塾大学医学部電子顕微鏡研究室


[はじめに]透過型電子顕微鏡試料作製における電子染色では、酢酸ウランと鉛を用いた二重染色が一般的に行われている。しかし、昨今、国際規制物資の規制強化により、国内での酢酸ウラン入手が困難となっている。また、放射線の人体への影響や放射性物質の廃棄の問題などから、ウランに代わる染色剤の開発がなされてきた。そこで今回我々は、現在までに発表された代表的な代替ウラン染色を行い、どの染色法が最適なのか検討したので報告する。
[材料および方法] 材料は、グルタルアルデヒド‐四酸化オスミウム二重固定をしたマウス腎臓で、エポン樹脂包埋による一般的な試料作製法を用いた。染色は、以下の8種類の染色剤を用い原法に準じた。すべてクエン酸鉛との二重染色を行った。①Oolong tea extract(以下OTE)②塩化ハフニウム③白金青④アリザリン⑤酢酸ガドリニウム⑥酢酸サマリウム⑦リンタングステン酸⑧リンモリブデン酸である。コントロールとして酢酸ウランとクエン酸鉛の二重染色、クエン酸鉛のみ、無染色を用いた。透過型電子顕微鏡は、JEM-1230(日本電子)を用い、加速電圧80kVで観察した。我々の施設では、主にCCDカメラ(Bioscan732,Gatan)を用いたデジタル写真撮影を行っており、カメラ制御ソフト(Digital micrograph)による自動補正された画像を保存している。よって、今回の検討では、自動補正されたデジタル画像を対象とした。
[結果・まとめ]酢酸ウランとクエン酸鉛の二重染色と比較した場合、OTE>塩化ハフニウムの順で同等の染色性がえられたが、他の染色法では染色強度の減弱、コントラストの低下がみられた。今後も染色手法などさらなる検討が必要と考える。


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