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膠原線維染色の染め分け機構の解明
-アザン染色、マッソン染色を中心に-

磯崎勝

小田原市立病院 病理診断科


はじめに
アザン染色やマッソン染色は膠原線維を青く、それ以外を赤またはオレンジ色に染める大変美しい染色である。このように美しい染め分けがなされる染色ではあるが、その原理については不明な点や実際の現象にそぐわない点も多く見受けられる。今回、これらの染色の染め分け機構の解明を試みたので報告する。

方法
1.アザン染色やマッソン染色に用いられる色素の選択的染色性の有無を確認する。
2.リンタングステン酸(PTA)およびリンモリブデン酸(PMA)の作用を検証する。
3.PMAの吸着局在を検証する。
4.アニリン青色素とPTAの結合性を検証する。

結果
1.アザン染色やマッソン染色に用いられるほとんどの色素には選択的染色性は認められない。
2.アニリン青やライトグリーンを用いる膠原線維染色の染め分けは、PTAあるいはPMAの作用による。

考察
膠原線維染色に用いられるアニリン青色素の選択的な染色性の要因は、アニリン青色素を吸着させる前に処理を行うPTAおよびPMAの作用による。PTAおよびPMAはリンやリン酸の検出にも用いられていることより、組織内のリン酸基などに吸着していることが示唆される。実験よりPTAおよびPMAは、アニリン青色素とは吸着や結合を示さない。このために、アザン染色やマッソン染色では先に組織内のリン酸基にPTAおよびPMAが吸着する。そして、その後アニリン青染色を行うがこの色素はPTAやPMAとは吸着や結合を示さないために、PTAやPMAが吸着した部位にはアニリン青色素が吸着することができなくなる。このような機構によってアニリン青色素の選択的な染色性が生じるものと考えられる。


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