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伸展条件から考える病理組織標本作製の標準化

長谷川秀浩

新潟県厚生連長岡中央綜合病院


[はじめに]
パラフィン包埋組織から薄切された切片は皺や収縮を伸ばす伸展という操作が加えられる。しかし、その方法や温度はパラフィンの融点や組織の種類、切片の厚さなど、更には施設間においても様々である。病理検査の標準化の為には切片の伸展条件が標本に与える影響についての認識する事が重要と考えた。今回、我々は薄切された切片について各種の伸展条件が及ぼす形態的変化や各種染色に与える影響について報告する。[方法] パラフィン包埋組織を3μmに薄切後、伸展板により伸展させた切片とぬるま湯にて伸展を行った切片を伸展板上でそれぞれ実験的に設定された温度で40分間程度スライドガラスに張り付けた。その後37℃で一晩乾燥させ各種染色を施し、標本に与える影響を検討した。伸展の良悪の判断にはリンパ節のひび割れや結合組織の膨化、核クロマチンの凝集の程度と各種染色結果を比較し総合的に判断を行った。[結果] 各伸展条件で作成された標本のHE染色像については湯伸ばし後40℃伸展板にて貼り付けを行った切片が組織学的に最も良好であると判断された。更にHE染色以外の15種類の特殊染色について、伸展温度の違いが染色結果に影響していると判断された染色法は8種類あり、これらの染色法では伸展温度の上昇に伴って色素の染色性の低下が認められた。 [考察] 検査業務の標準化が進行する中、病理部門では進んでおらず個人格差や施設間格が解消されていない。今回の検討結果から本来、切片を伸ばす為に行っていた伸展だが、作成された標本の形態や染色結果にまで大きく影響を及ぼしている事が明らかにされた。作成した標本の再現性や精度を維持するためにも固定や染色手技と同様に伸展条件は厳密な管理が望まれる工程と判断された。


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