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2槽式密閉型自動包埋装置STP420ESを用いた術材組織検体の標本作製時間短縮の試み

栗田佑希

広島大学病院 病理診断科


[はじめに]
 本学では原則的に、切除臓器検体は手術の翌日に切り出されるが、充実性臓器や脂肪の豊富な臓器の一部で固定不良部分が残るため、切り出し後に再固定処理を行っていた。このため適切に固定された検体より1日ないし2日遅れて作製されていた。そこで2槽式の密閉型自動包埋装置であるサーモフィッシャーサイエンティフィック社のSTP420ESを用いることにより、固定不良検体も固定良好検体と同時に標本作製が可能となり時間短縮に繋がったので報告する。

[STP420ESの利点と実際の運用]
 STP420ESの利点は、カセット内の切片の最大面に薬液が接触する方式で浸透効果が高いことと、2つの処理槽それぞれに独立したプログラムでのプロセッシングが可能なことである。導入前は切り出し後の固定不良検体をサクラVIP5Jr.で12時間加圧固定処理し、1日遅らせて翌日にプロセッシングを行っていたが、STP420ES導入後はロータリー槽で固定良好検体を低濃度メタノールからプロセッシングを開始し、固定不良検体はサブ槽で緩衝ホルマリン1槽を追加したプログラムを行うことで固定良好検体と固定不良検体を同時処理することが可能となった。また固定不良あるいは固定状態に差があっても、固定状態不良検体の固定時間を最大2時間延長し、プロセッシング終了時刻を遅らせるという運用も可能となった。

[まとめ]
 本学におけるSTP420ESの運用法に関して報告した。STP420ESを導入したことにより、固定不良検体も固定良好検体と同日に標本作製が可能となった。さらに、カセットバスケットが槽内で常に回転し薬液は絶えず撹拌されているため浸透率は高く、切出時に固定不良標本であっても固定操作をプログラムすることで良質な標本が作製できた。従来より標本作製における全体的な効率化が可能となり、処理能力の向上に繋がった。


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