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Loop-Hybrid Mobility Shift Assay、Mutant Allele Specific Amplification
(MASA)法を用いたEGFRの検査について
―方法・特徴・機材・コスト・結果例を中心に―

神奈川県立病院機構 神奈川県立がんセンター 腫瘍分子生物検査室
関口 博信


 上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)は、細胞膜に存在し細胞外にある成長因子(リガンド)による刺激を細胞内に伝え、その刺激をシグナル伝達により核にまで伝えている。正常組織においては細胞の分化、発達、増殖、維持の調節に重要な役割を演じている。しかし遺伝子変異によりEGFRのATP結合部位に構造変化を起こすと、リガンドの刺激がなくても恒常的に活性化(自己リン酸化)するようになり、細胞の悪性化に関与する。ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(タルセバ)といったチロシンキナーゼ阻害薬は、変異型EGFRのATP結合部位にATPよりも高いアフィニティーで結合して自己リン酸化を阻害することによりシグナル伝達を遮断して、細胞の増殖や分化を抑制する。EGFRの遺伝子変異の有無は、肺癌のチロシンキナーゼ阻害剤に対する薬剤感受性予測として最も有力であると認識されている。
当院では2005年から当臨床研究所で開発したLoop-Hybrid Mobility Shift Assay(LH)法を用いて、EGFR遺伝子exon18、19、21の変異出現頻度の高い領域の変異検出を行っている。LH法はPCR産物とLH Probeをハイブリダイズさせた後、伸長反応を行い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行う方法である。LH法は既知の遺伝子変異を高感度で簡便に検出する方法で、専用の高価な機材を必要とせず、測定時間も通常のPCRと変わらない。検出感度も直接塩基配列決定法よりも高感度である。
Mutant Allele Specific Amplification (MASA)法は、PCRプライマーの3’末端にミスマッチがあるとPCRの効率が低下することを応用した方法である。つまり、PCRプライマーの3’末端を変異特異的配列にすることにより特定の遺伝子変異をしたアリルを特異的、高感度に検出することが可能となる。  
この二つの方法について、原理・特徴・機材・コスト・結果例を中心に紹介する。


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