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Smart Amplification Process(SMAP)法と濁度測定装置によるEGFR遺伝子変異の検出

総合病院土浦協同病院 病理部
池田 聡


 肺癌においてEpidermal Growth Factor Receptor(EGFR)遺伝子の変異をしらべることは、分子標的治療薬イレッサ、タルセバの適応を調べるために必須な検査になりつつある。当院では初診時進行肺がんの状態で発見され、すでに手術不能である患者がしばしば見られ、その場合迅速に治療を開始する必要があり、EGFR遺伝子検査にも迅速性が要求される。一般病院では核酸増幅を行う設備が不十分であることや、検査が煩雑で院内で検査できないなどの理由で外注している施設が多いが、当院では新しい核酸増幅法であるSmart amplification process(SMAP)法と簡易的な濁度測定装置を用い、手間をかけずにEGFR遺伝子検査を行っている。本法は、5種類のプライマーと鎖置換型DNA合成酵素を用いて増幅を行い、短時間で大量の増幅産物を作れる。さらにミスマッチ結合タンパク質があるために非特異的な増幅が起こりにくい、などの特徴がある。  
この方法は他法に比べ①PCR法のような温度の上下が必要ないため反応時間が短縮する。②電気泳動を必要としないため1時間以内で結果が判明する。③感度が0.1%と高く、正常細胞が多く混在した検体でもOK。④試薬調整がシンプルで準備時間も短い。などの利点があるため多忙を極める一般病院の病理検査室には好適と考える。
測定には(株)ダナフォームのSmart Amp EGFR mutation detection kitを使用し、濁度測定にはRT-130C(栄研化学)を用いて行っている。本法はex19とex21の変異パターンの大部分を一回の測定で検出できるキットになっており、従来法にて測定を行った肺癌患者のDNAサンプル26例をSMAP法と比較し相関性を観察したが、結果は完全に一致していた。
EGFR変異などの悪性腫瘍遺伝子検査は分子標的治療薬の選択に重要であり、迅速に結果が得られる本法を院内検査に導入することは、治療を迅速に開始でき、その有用性は高いと考えられた。


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