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PCR-SSCP法とDirect-Sequence法を用いた遺伝子変異検出
―北里大学病院・東病院の現状―

1北里大学東病院 病院病理部   久場 樹1
2北里大学病院 病院病理部    山下 和也2
3北里大学 医学部 病理学 吉田 功3 三上 哲夫3 岡安 勲3


 北里大学東病院において1994年Simplified rapid(SR)法(後述)を開発し、2010年までに消化器疾患を中心に7000症例についてPCR-SSCP法による遺伝子変異解析(K-ras、p53、DPC4、c-kit、PDGFRα、EGFRの遺伝子)を行ってきた。
SR法の特徴は、①標本採取の簡便性として竹串によるMacro dissection擦過法、②迅速抽出法として溶解液(PNT buffer)とboiling法の開発、③アイソト-プや大きな泳動装置を用いない、④抽出から検出までが6時間(当時は迅速であった)である。
PCR-SSCP法の原理・手技は、目的の遺伝子領域をPCRにより増幅し、2本鎖DNAを熱により1本鎖に開離して電気泳動を行うもので、遺伝子の立体構造は、塩基組成と泳動条件に依存し、泳動距離として示される。泳動後のゲルは、銀染色により肉眼観察が可能となり、遺伝子配列の差はband位置のshiftとして検出される。具体的なコストは、1347円/件であり、必要な機器は、PCR装置と電気泳動装置(60万円位~250万円)である。  
この手法の利点は、未知の変異を網羅的に検出が可能で、感度が高いことであり、逆に欠点は、増幅産物の大きさに制限があることである。
変異の塩基配列の確認は、Sequence法以外の方法は現在無い。しかし、Direct-Sequence法のコストは3448円/件、使用機器は1千万円以上と高額であるためその前段階として、正確かつ鋭敏なscreening手法は重要である。
現在、大腸癌のEGFR免疫染色とK-ras遺伝子点突然変異解析の結果を、病理診断として報告書に記載し、診療科へ分子標的薬(セツキシマブ)に対する情報提供として保険算定とがなされている。ファーマコゲノミクス(薬理遺伝子学)として、最新、最良の患者サービスを目指している。


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