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軟骨組織切片上のシワ防止法

東京大学大学院整形外科脊椎外科第2研究室
河原 元


【はじめに】  
病理組織標本を作製する上で、薄切切片上に生ずる皺(シワ)(組織の重なり)に悩まされることが多い。一般組織でも作製手法によりシワができやすく、特定な組織(脳、骨、軟骨)では多く発生する1)。今回、軟骨組織を用いて3)、組織切片上のシワ防止法を検討した。
【方 法】
<材 料>ヒト剖検例および胎児ないし幼齢マウスの関節と脊椎の骨・軟骨組織を用いた。
<実験方法>切片浮かせ条件、掬いスライドガラスの種類、伸展方法の諸条件についてシワの最も少ない方法はどれかを検討した。
1.型のごとく固定、脱水、包埋し作製したパラフィンブロックから3μm切片を連続切片で10枚採取した。
2.切片浮かせ方法:薄切切片を①イオン交換水 ②0.1%酢酸水 ③0.1%トルイジン青の各液に浮かせ比較した。トルイジン青の浮かせ法は阿部らの方法を改良した2)。トルイジン青液の組成はトルイジン青(Toluidinblau nach Hoyer E.MERCK)0.1gをイオン交換水 100mlで溶解したものである。
3.掬いスライドガラス:①剥離防止剤コーティングスライドガラス(マツナミ フロンティア)②無コーティングスライドガラス(マツナミ スーパーフロスト)を用いた。
4.伸展方法:①ホットプレート(42℃)②温浴槽(40℃)で伸展した。
5.62℃のパラフィン溶融器で乾燥した。
6.各スライドを脱パラ後、H&E染色し、顕微鏡下で組織上のシワの有無を比較した。
【結 果】  
0.1%トルイジン青液を切片とスライドガラス間に「流し込み伸展」したものが、切片上のシワが少なかった。
【考 察】  
軟骨はその物性面や関節軟骨等の存在する場所の形状という組織形態的見地から、シワのできやすい組織であるが、「トルイジン青流し込み伸展」法ではトルイジン青色素が切片とスライドガラス間で架橋となり、シワが生じ難くなるのではないかと考える。
【参考文献】
1)平田誠市ら:脳におけるパラフィン標本作製時のしわ防止法の検討 医学検査,48:942~945,1999
2)阿部 仁ら:トルイジン青染色液を用いた面出し確認のための簡便な方法 病理技術 71巻2号
3)Shigeru Nakamura,et al: S-100 protein in human articular cartiage. Acta Orthop Scand 1988;59(4):438-440


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