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術中迅速診断における大型標本作製法の工夫
~特に消化管断端の標本作製について~

虎の門病院 病理部
中村 信之


 我々の施設では、胃や食道などいわゆる消化管の迅速診断において、病変が広範囲にわたる場合及び不明瞭な場合の評価については、断端の全周あるいはそれ相応の長さの切り出しを行い評価している。
しかし、切り出した断端の長さが長ければブロックの作製数も多くなり、あるいは、ブロック数を減らそうと無理をして長いまま曲げてブロックを作製すると、面出しに相当深く削り込まなければならなかったり、さらに、全層きれいに標本にすることにも苦慮している。
一方で、このような欠点を知りながら標本作製の時間短縮のために後者の方法を用いているのが現状であったが、厚紙を用いることで従来の長さのまま全層きれいに標本にできないかと考えた。
材料は当施設で実際に消化管の迅速診断に提出された胃と食道の検体を用いた。切り出し後の検体を厚紙に貼り付け、さらにそれを曲げてドライアイス・アセ トンで一次凍結して組織を硬化させ、それを包埋皿に移し包埋剤を加え二次凍結することによりブロックを作製した。それをクリオスタットにて薄切し、固定 後、HE染色を施した。
今回の方法を用いると、切り出し後に収縮が著しい消化管の筋層や食道粘膜もしっかりと伸ばせ、しかも粘膜から筋層まできれいに観察できる標本作製が可能 であった。また、短く切らずに標本にすることができたので組織のつながりを明瞭に観察できた。さらに、一次凍結によって薄切面が平らに凍結できるため面出 しが容易となり、その分、標本作製時間も短縮することができた。
今回紹介する方法は、厚紙を用いるだけという非常にシンプルなもので、消化管断端だけでなく大型検体にも応用できるなどまだまだ応用の余地があると考える。


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