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非脱灰硬組織凍結切片標本作製技術とその応用

川本忠文(鶴見大学・歯学部・RI研究センター)


 老齢化に伴う骨粗鬆症や骨欠損部の再生等で、骨組織の研究が重要になっている。骨組織は、軟組織と異なり化学固定後、脱灰操作を行わなくては切片標本を作製することができない。しかし、化学固定や脱灰操作は、生体成分の溶出や蛋白の変性を引き起こすとともに組織から多くの情報を失わせ、酵素組織化学染色、免疫組織化学染色、遺伝子組織化学染色等の結果に影響を及ぼす。切片から正確な情報を得るには、未固定非脱灰の新鮮試料から切片を作製することが望ましく、凍結切片作製法は、それに適した方法である。従来の凍結切片作製法は、軟組織から凍結切片を作製できるが、硬組織からの凍結切片作製は困難(不可能)である。
著者が開発実用化した凍結切片作製法では、強力な粘着フィルム(Cryofilm)を切片支持材として用いて、薄切時の切片の損傷を回避しながら切片を作製することができる。そのため、骨組織を含め、種々の試料から形が正確に保持された凍結切片(厚さ2μm程度まで)を容易に作製することができる。切片は、粘着フィルムに貼りついた状態で染色され、最終的に粘着フィルムのプラスチックフィルムとスライドグラスの間に専用封入剤を用いて永久保存される。必要に応じてカバーグラスの間に封入することもできる。作製された切片は、組織学的染色、組織化学的染色、酵素組織化学的染色、免疫染色、蛍光免疫染色、遺伝子組織化学、オートラジオグラフィ、LMDによる微小試料片採取、水溶性物質の分布観察等、従来の切片を用いた研究等、多くの目的に利用することができる。
本手法の利点は、種々の試料から多くの目的に使用できる切片を確実に作製することができ、しかも試料採取から20分で永久標本とすることができる。このような利点から、生命科学の分野で重要な研究ツールとなるであろう。


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