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硬組織標本作製法について

新潟大学大学院医歯学総合研究科細胞機能講座 分子細胞病理学分野 大谷内 健二


 小さな硬組織に遭遇した場合、頻繁な替刃の交換等で解決する事例を多く経験する。
しかし大方の硬組織はその取り扱いに苦慮しているのが現状ではないだろうか?
硬組織標本を作製する上では以下に示す幾つかのポイントがある。
1.脱灰とはその対象物である組織内の無機塩(カルシウム分)を溶解・除去することである。
2.固定や切り出し・脱脂に至るまでの標本処理過程の工夫によって、脱灰に余計な時間と労力を使わずに済む。固定は組織の変性や膨化を防ぐので充分な時間が必要である。切り出しでは出来る限り最小限の大きさにすることが重要であり、骨基質に覆われている部分では内部の骨髄成分を出来るだけ脱灰液に触れさせる事が必要である。小組織の脱脂は時間をかける必要はないが、大型の組織では組織内部の脂肪成分が脱灰液の浸透を緩慢にするため低濃度から高濃度へのアルコールを使った脱脂を薦める。
3.脱灰液は種々紹介されているが、主だったものは強酸性液である。これらは一長一短があり、どれを使用するかは、目的や各施設の事情にあわせて選択する。我々は通常10%トリクロロ酢酸液を使用している。これは鍍銀染色等の結合組織の染色性が良く、比較的脱灰時間が短い。時にPlank- Rychlo液や中性脱灰液(EDTA)も使用している。
4.脱灰した硬組織は厚くなりがちなために薄切時はやや薄く切るよう心がけている。更に酸性に傾いた組織の染色には注意が要る。要約すると硬組織標本を取り扱う時のポイントとして ①迅速処理 ②操作が簡便 ③組織障害が少ない④染色性に影響させない ⑤廉価である 等があげられる。
今回の発表では我々が普段行っている方法を紹介し、幾つかの染色事例を供覧する。


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