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病理組織染色を用いたトリコスポロンの鑑別
―グルクロノキシロマンナン(GXM)に着目して―

尾花ゆかり(日本大学医学部病理病態学系病理学分野)


【はじめに】
Trichosporon(トリコスポロン)属は自然界に幅広く生息する酵母様真菌である。夏型過敏性肺臓炎や白色砂毛症の原因真菌として知られているが、近年、易感染性宿主における重篤な日和見感染症の起因真菌としても注目されている。病理組織学的には、他の真菌、特にカンジダ属との鑑別がしばしば困難であり、これまでわれわれはグロコット染色と希釈PAM染色の染色性の相違が両者の鑑別診断に有用であることを報告してきた。今回、われわれはトリコスポロンとクリプトコッカスに共通するグルクロノキシロマンナン(GXM)に着目し、クリプトコッカス莢膜に対する染色法を中心に再検討した。

【材料と方法】
血液培養にてTrichosporon asahii(トリコスポロン・アサヒ)が分離同定された2剖検例を使用した。対照としては、胃カンジダ症(3例)、アスペルギルス肺炎(3例)、クリプトコッカス肺炎(1例)を用いた。20%ホルマリン固定・パラフィン包埋切片を作製し、様々な病理組織染色を再検討した。

【結果と考察】
グロコット染色とクロム酸シッフ反応では、トリコスポロンは他の真菌に比べて弱い染色性を示した。一方、希釈PAM染色、アルシアン青染色ならびにコロイド鉄染色においては、トリコスポロンとクリプトコッカスがカンジダやアスペルギルスに比べて有意に染色された。ムチカルミン染色においては、クリプトコッカスに強く陽性であったのに対し、トリコスポロンでは弱陽性、カンジダとアスペルギルスは陰性であった。したがって、形態学的に類似するトリコスポロンとカンジダの鑑別には、グロコット染色と希釈PAM染色に加えて、アルシアン青染色とコロイド鉄染色の染色性の相違が有用であることが示唆された。


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