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乳腺腺細胞の機能的分化段階の表現方法

NTT関東病院病理診断部 牛島友則 竹田桂子


【序言】
乳腺組織の生理機能的最終分化は、授乳期に乳汁分泌を分泌することである。しかし最終分化前後の過程でも恒常的組織維持のためのコントロール機能が存在する。
我々は形態学的には相同な正常導管上皮細胞内にも、ホルモンレセプター(ER,PR)の不均一な分布が見られることから、個々の細胞レベルにおいても機能的分化段階が反映されるものと仮定。細胞の種類や分化段階によって発現するタイプが動的に変化するサイトケラチンサブタイプ(以下CK sub)の組み合わせにより乳腺上皮細胞の分化段階の差を表現できるか検討した。

【方法】
高分子量サイトケラチンを認識するポリクローナル抗体と低分子量サイトケラチンNo19(ホルモンレセプター陽性細胞と相関が見られる)を認識するモノクローナル抗体の混合抗体を反応後、ポリクローナル抗体は間接法により緑色蛍光色素(Alexa488)を標識、モノクローナル抗体はLSAB法により赤色蛍光色素(Alexa594)を標識。DAPIによる核染色後トリプルバンドパスフィルター下にその融合色を検出する。蛍光融合色の色調の異なる上皮細胞の占める割合により、5%以上含まれる場合はHeterogeneous、5%未満の場合はHomogeneousと定義する。

【結果】
本研究では、乳腺導管上皮細胞の分化過程において蛍光抗体法で二重染色を行った。これにより
1 乳腺上皮細胞の機能的分化段階の面から上皮細胞を細分類することが可能であった。
2 悪性腫瘍では88%(75例中66例)がhomogeneousであるのに対し、良性腫瘍では95.5%(22例中21例)がheterogeneousになり、両者の間には統計学的に有意な差が見られた。
3 良性腫瘍では個々の腫瘍細胞の分化傾向が異なり、heterogeneousなCK subの発現が見られるのに対し、悪性化すると細胞ごとの分化傾向の相違がなくなり、発現パターンがhomogeneousになると考えられた。

【考案 結論】
悪性腫瘍ではサイトケラチンの発現パターンは腫瘍細胞間で一様で、二種類のCK subの比が一定であるのに対し、良性腫瘍ではこれらのCK subの比が細胞ごとに異なっていることが示唆された。正常な乳腺の導管および腺房では、CK subの発現は個々の上皮細胞の分化傾向を反映して異なるため、heterogeneousな分布を示している。本研究の結果より、良性腫瘍では個々の腫瘍細胞の分化傾向が異なり、正常の導管・腺房に類似したheterogeneousなCK subの発現が見られ、悪性化すると細胞ごとの分化傾向の相違がなくなり、CK subの発現パターンがhomogeneousになると考えられる。


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