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HercepTestに関する最近の知見

神原 由季(ダコ・ジャパン株式会社)


 HercepTest(体外診断用医薬品;ダコ HercepTest Ⅱ)は、HER2タンパクを標的としたヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブ(ハーセプチン、中外製薬株式会社)療法の対象症例を選別するスクリーニング法として、2001年に厚生労働省から体外診断用医薬品として保険適用承認された。承認から7年が経過して、標準HER2検査法として国内外で幅広く使用されている。HER2検査を適切に実施するためには、体外診断用医薬品として承認されているHER2検査キットをその使用手順書に厳密に従い使用すること、検査に使用する病理組織標本の作製においては、推奨の固定時間や固定液を用いることが重要であり、特に、過度の固定によって染色性が低下することがこれまで報告されてきた。HER2検査結果のスコアリングについても、一定した結果を得るためには十分な注意が必要であり、スコア2+については、FISH法により確認をすることなどが推奨されている。
 今回、弊社デンマーク本社において、薄切後のベーキングの温度および時間が染色性に与える影響について検討を行った。その結果、60℃以上の高温での長時間乾燥は染色強度の減弱を引き起こし、半定量的なHER2タンパクの評価(スコアリング)に影響を与えることが明らかになったため、本検討により判明した適切なベーキングの温度と時間について紹介したい。
 また、適切なHER2検査結果を得るためには、抗原賦活処理として実施する温浴処理において、その温度管理が重要であるが、新しい抗原賦活処理装置であるPT Linkの採用により、より安定した加熱処理と、処理中の実際の状況のモニターとその記録が実現可能となった。染色結果の再現性および抗原賦活処理の精度管理を改善する例として紹介する。
 さらに近年のHER2検査において、FISH法による遺伝子増幅の有無の検索も重要であるが、蛍光顕微鏡が必要であること、暗室で行うシグナルカウントにかかる人的負担などにより、現在、一般の病理検査室で実施している施設は少ない。将来的には、IHC法と同様に光学顕微鏡下で検索可能なCISH法により、HER2の遺伝子増幅を検索することが可能になることが予想され、弊社において開発中のダブルカラーCISH法、ダコ DuoCISHについても簡単に紹介する。


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