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乳がんにおけるHER2蛋白の過剰発現とHER2-FISH検査異常値の相関性
-検査結果をどの様に理解し、報告すれば良いのか?-

桑尾 定仁(東大和病院・病理細胞診断科)


【序言】乳がんの病理検査にHER2蛋白とHER2-FISHの検査が導入されてから数年経過しているが、検体の固定の問題ともあわせ、HER2蛋白発現レベルとHER2-FISH検査値との整合性については依然として議論の多いところである。今回、我々は乳がん症例について三種類の抗体(c-erbB2/poly, c-erbB/SV2-61γ, c-erbB2/CB11)を用いて免疫染色を行い、HER2-FISH検査値との相関性について評価・検討してみた。

【材料・方法】材料は生検40症例、手術36症例を使用した。c-erbB2/polyとc-erbB2/SV2-61γについてはアミノ酸ポリマー法による手染め、c-ebrB2/CB11については自動染色装置を用いSAB法により染色した。HER2-FISH検査はパスビジョンHER2 DNAプローブキットを使用した。

【結果】生検材料については9症例がHER2蛋白陽性と判断されたが(22.5%)、HER2-FISHは8症例(20.0%)が陽性を示した。また、手術材料については6症例がHER2蛋白陽性(16.7%)で、5症例がHER2-FISH検査陽性と判断された(13.9%)。当院にて生検から手術に移行出来たのは15症例で、2症例がHER2蛋白及びHER2-FISH検査が陽性であった(13.3%)。残る13症例についてはHER2蛋白及びHER2-FISH検査が陰性であった。

【考案】三種類のc-erbB2抗体を同時に免疫染色することで、HER2蛋白の異常発現をほぼ正確に評価しえた。特に、HER蛋白の過剰発現時、SV2-61γとCB11は“all or nothing”に近い反応を示すことより、HER2蛋白過剰発現の正確な評価に有用と判断された。また、時折みられるHER2蛋白発現とHER2-FISH検査値の結果の解離は後者が多クローン性の腫瘍細胞構成を充分反映していないためと考えられた。


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