■ プログラム

HOME > 例会抄録 > 第74回病理技術研究会 > Non Xylen(ノンキシレン)の使用経験

Non Xylen(ノンキシレン)の使用経験

広井禎之 他(防衛医科大学校臨床検査医学講座)


【要旨】ノンキシレンはキシレンとほぼ同様な性質を持つ非キシレン系溶剤で、キシレンに比し低毒性低引火性および色素の溶解のないのが特徴である。このノンキシレン脱パラフィン、透徹に使用し、病理組織標本作製工程における適応を検討した。

材料は病理解剖例の大腸、肝、腎、食道、膵、脾、肺、前立腺、心、皮膚を用いた。病理解剖により摘出した組織は10%?20%ホルマリン、緩衝ホルマリンで固定し、真空自動包埋装置38時間プログラムにてパラフィン包埋した。薄切はブロックを冷却せず加湿器を用いてミクロトーム目盛りを4μmに設定して行った。

染色はH&E、マッソン、EVG、アルシアンブルー・PAS反応重染色、等を施した。ノンキシレンの脱パラフィンにおける適応はキシレン、ノンキシレン共に5槽用い、第1層目に10分間静置後、各槽10dips行い、さらにアルコールを通して親水した。透徹への適応はキシレン、ノンキシレン共に5槽ずつ用意し透徹工程を行った。

なお、ノンキシレンでは1)ノンキシレンでの透徹工程に移る前にエタノール:ノンキシレン=1:1のものとイソプロピルアルコール:ノンキシレン:=1:1を1槽組み入れた、

2)封入前にキシレン1層を加えた工程を追加した。封入はマリノールで行い、キシレンおよびノンキシレンで希釈しその親和性の検討も行った。全行程を通しての臭気に対する感想も集計した。標本の退色も重要な項目であり、封入後の退色程度を経時的に観察した。

脱パラフィンにおける適応ではパラフィンの残存はなく、親水性も良好であり、キシレンで脱パラしたものとノンキシレンで行った標本との間に染色性の差異は認められなかった。ただし、ノンキシレンとアルコールとの親和性はキシレンと比較すると低く、標本中のノンキシレンとアルコールを置換するためにはキシレンとアルコールを置換するために費やす労力の2倍は必要と考える。

これは透徹工程でも同様であるが、透徹前にアルコール類:ノンキシレン=1:1を1槽おくことによりかなり軽減される。

透徹に用いた場合の透徹性に問題はないがマリノールとの親和性は低く、封入後のノンキシレン蒸発に伴い、気泡の発生が見られた。封入前にキシレンを1槽用いた場合ではこのような現象は見られなかった。

ノンキシレンでマリノールを希釈したところ、白濁が見られた。
臭気は特有であり、賛否両論であった。
標本の退色は染色後1―2ヶ月で特に認められていない。


例会抄録一覧へ戻る