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キシレンの取り扱い-労働衛生教育からのアプローチ-

清水秀樹(日本医科大学千葉北総病院病理部)


ホルムアルデヒドやキシレンなど健康障害をおこす可能性のある有害化学物質を使用する作業は、健康障害防止のため労働安全衛生関係法令(以下、関係法令)で様々な事柄が定められている1),2).その中に「健康障害を防止するため危険有害な業務に就いている者に対し,安全又は衛生教育を行うように」と記されている.今回は,有機溶剤作業主任者の立場からキシレンに対する衛生教育に準ずる報告をする.

キシレンによる健康障害には,皮膚炎,目や喉の刺激や中枢神経への麻酔作用が知られている.近年,低濃度長期暴露によるシックハウス症候群との関連性やアレルギーの惹起,悪化の促進が明らかにされている.さらに自然流産,神経症状などに関する論文もみられる.また、動物実験では胎盤を通過し母から胎児への移行が確認されている.このような有害性から健康障害の防止を行うには,事業主や管理職、作業者がキシレンに関する様々な事柄を理解することが必要である

1).そのため,衛生教育の事柄に沿って①衛生管理体制②キシレンの物理化学 ③危険有害性 ④健康障害防止法 ⑤保護具 ⑥特殊健康診断 ⑦応急処置についてまとめた.病理標本作製業務は関係法令の適用となるが有機溶剤作業主任者3)や特定化学物質等作業主任者4)の適用は除外されている。このことは、医療機関において、事業主や労働者の有害化学物質に対する認識、対策が不十分な要因のひとつと考える。安全衛生リスクの軽減をするためには,健康障害防止の高い意識が必要である.

1)清水秀樹:医療現場の危険有害化学物質取扱い(労働安全管理のための): メディカグローブ,2006.

2)厚生労働省安全衛生部監修:安全衛生法令要覧 平成17年度版.中央労働 災害防止協会,2005.

3)清水秀樹:有機溶剤作業主任者技能講習を受講して. Medical Technology, 33(4) 428 2005.

4)清水秀樹:特定化学物質等作業主任者技能講習を受講して.Medical Technology, 34(5) 2006


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