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抗原賦活処理用プレッシャーチャンバーの検討

鳥巣加恵(ダコ・ジャパン株式会社メディカル・サイエンス部)


【目的】現在,病理検査室において抗原賦活処理に用いられている加熱機器は多様を極めている.一般に加熱処理の方法として電子レンジなどを用いたマイクロウェーブ処理,ウォーターバスなどを用いた温浴処理,オートクレーブなどを用いた加圧加熱処理などが広く利用されているが,それぞれ使用上の特性があることから,機器の選択に苦慮することが少なくない.そこで,これらの処理のうち抗原賦活効果が高いことが知られている加圧加熱処理と温浴処理の両方に対応可能な抗原賦活処理用プレッシャーチャンバー『Pascal』について,その抗原賦活処理の効果を明らかにするため,一般の抗原賦活処理機器との比較検討を行ったので報告する.

【材料および方法】検討はホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いた免疫組織化学染色を行った.抗原賦活処理にはPascal,一般のオートクレーブ(121℃/15分間)およびウォーターバス(95℃/40分間)を用いて染色性の比較を行った.Pascalの処理時間および温度は加圧加熱処理の場合は125℃/30秒間,温浴処理の場合は99℃(ドーゼ内液温は95℃)/40分間に設定した.染色は自動免疫染色装置を用いてポリマー法による検出で行った.

【結果】Cytokeratin, CD79α, Ki-67の染色を行い,Pascalの加圧加熱処理の抗原賦活効果をオートクレーブおよびウォーターバスと比較した.各抗体のPascal処理での染色性はオートクレーブとほぼ同等であり,ウォーターバスより処理効果は高かった.また,温浴処理が推奨されているHER2, ER, PgRを用いて染色を行い,Pascalの温浴処理の効果をウォーターバスと比較したところ,両者は同等の抗原賦活効果を有していた.今回の検討では,加圧加熱処理および温浴処理の両方で一般の抗原賦活処理機器と同等の結果が得られた.

Pascalは最大96スライドまで一度に処理が可能で,加圧加熱処理機能と温浴処理機能を併せ持っているうえ,従来の抗原賦活処理機器よりも小型で軽量である.また,容易に温度や時間を管理できるため,再現性の高い処理を行うことが可能である.そのため,温度管理が重要な免疫組織化学染色の抗原賦活処理において有用な機器であるといえる.


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