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PATHOSによる病理組織標本作製効率化の試みと応用

芹澤 昭彦 他(東海大学医学部付属病院病理診断科
東海大学医学部基盤診療学系病理診断学)


近年、医療機器や技術の向上により,腹腔鏡や胸腔鏡下での手術や内視鏡などによる縮小手術が施行され,日帰り手術や入院期間の短縮化が可能となりつつあり,それに伴い迅速な病理診断報告が求められてきている.

われわれは,その迅速化の試みとしてマイクロウェーブを応用した迅速全自動包埋装置(PATHOS)を用い病理組織標本作製の効率化と応用の検討を行なった.

その結果,標本作製時間においては,生検体(バイオプシーサイズ)では30分,ESD標本では4時間で病理診断報告まで可能であった.さらに,HE染色をはじめ特殊染色,IHC,ISH,FISHなどの染色結果やPCR法による遺伝子検索も大変良好な結果が得られた.

PATHOSは,縮小手術や治療方針選択のための病理診断報告や臓器移植のための評価といった迅速性および多様性を求められる病理検査に十分に対応が可能であると思われた.

また,PATHOS導入により,従来の大量一括処理や人員的なストレスを平均化でき,これまでの病理標本作製の流れを大きく変えることが可能なツールとして期待できた.

これまで困難とされてきた病理診断システムの迅速化が実現されつつある.迅速化がルチーン化した場合,医師,技師などの人側の対応が最も問題であろう.

迅速な病理診断報告は,患者の精神的ストレスの軽減や入院期間の短縮(経済的な負担の軽減)といった患者側のメリットや病棟稼働率の向上,迅速な治療方針選択への貢献,ワークロードの平均化などの病院・病理側のメリットをもたらす.長く続いた従来の病理診断システムから新しいシステムへの過渡期にある現在,さらなる新しい病理の創造を期待する.


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