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病理診断迅速化の必要性

福嶋 敬宜(東京大学大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学
東京大学医学部附属病院病理部)


インターネットもサクサク動かないとそっぽを向かれるほどのスピード社会を背景に,病理検査の世界でも「迅速な診断」への関心が高まっている.

それは医療をサービス業と考えるなら当然のことであり,「迅速」であることは顧客満足に直結するだろう.自分の体の一部が採取された患者さんが,なるべく早く診断結果を知りたいと思うのは当然であろうし,臨床担当医は,病理診断の結果が2日後に出ると分かれば,患者さんには3日後の外来に来るように伝えられる.手術標本の診断が退院日までに報告されれば,患者さんはその後の方針も含めた説明を受けて退院することが出来る.

このような患者さんへのメリットを考えると迅速な病理診断を考える価値は確かに大きいだろう.さらに,このような顧客満足とは別の視点からも,病理検査の迅速化を推進する理由は挙げられる.

そこでは,積極的に迅速化の方策を考え,仕掛けることが重要であり,その結果として,病理部門全体の人員の再配置,ワークフローの見直し,リスクの軽減措置なども推し進めることができるというものだ.つまり,迅速化をゴールとは見なさず,業務環境改善へのきっかけ(またはスタート)と考える発想である.

東大病院病理部は病理診断の迅速化の第1ステップとして2003年に連続迅速自動包埋装置を導入し技師のワークフローを大きく変え実績を上げてきた.さらに2007年1月には全自動連続HE染色機,全自動免疫染色装置,液状細胞診システムを導入し,病理診断「迅速化」の新たなステージに突入する.

これにより,病理部門における細切れの(手)作業を自動化,連結化することによって業務が効率化するだけでなく,染色精度の標準化なども容易となり,結果的に標本の質や診断精度も向上すると考えられる.

病理検査・診断の迅速化は,顧客(患者および臨床担当医)満足とともに病理検査部門スタッフの両者に満足を与えてくれるものと信じている.


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