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胃EMR切除標本における標本作成の一方法

徳重佐矢加ほか(静岡がんセンター病理診断科)


(はじめに)近年、早期癌の内視鏡的治療法である内視鏡粘膜切除術(以下EMR)が広く普及し,食道,胃、大腸で好成績を上げているしかし、その標本作製法については確立された方法は無く,各々の施設で創意工夫し行なわれていると思われる。
今回,当センターで日常行なわれているEMRの標本作製法を注意点も交えて紹介する
(材料と方法)当センターで切除された胃EMR検体を発泡スチロール板に伸展し張り付け、10%ホルマリン固定後、胃癌取り扱い規約に準じて切り出しを行う。
切出された組織を包埋カセット(W22;村角工業,大阪)へ入れる際、まずカセットにEMR用スポンジ(51×21.5x3mm;村角工業)を一枚入れ,その上にカセットに入る程度の連続した番号の組織片を形が崩れないように平行移動する。この時,組織が彎曲しないように注意する。この組織の上にもう1枚スポンジをのせてから蓋をする。包埋時以下の注意点に留意する。
1.金属製の包埋皿を用いる。
2.組織の包埋時、粘膜の割面が出るように手前に立てて包埋する。
3.切出し本数もしくは切出し番号を確認しながら包埋する。
4.複数本の組織片を包埋するため包埋皿を傾け徐々に冷やし,1本ずつ確実に組織を立てて包埋する。
5.すべての組織を包埋皿に入れた後上から軽く押さえる。
(まとめ)本法の特徴は、組織をスポンジで挟むことにより、組織片をカセット内で移動させないことで連続した複数の切片を1枚のプレパラートに正確にのせることを可能にした点にある。包埋時の注意点を確実に行うことにより安定した標本を作製できるため、比較的簡便であり食道,大腸のEMR検体、さらには普及しつつあるITナイフによる広範囲の切除症例にも十分対応が可能なことから、正確さと簡便化を同時に実現した有意義な標本作製法と考えられる。


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