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封入剤によるHE標本の退色について

荻隆男(東京都老人医療センタ-病理部門)


【背景ならびに目的】近年標本の退色が目立つという病理医の指摘があっ>た。そこで我々は退色の原因を究明し、その対処法を見出すことを目的とする研究を計画した。退色の原因を明らかにする為に、標本作製の全過程(染色、脱水、透徹、封入)と標本の保存方法を見直した。特に、色出しに使用する水、脱水に用いるアルコ-ル、透徹に用いるキシロ-ルに注目し検討したが、退色は改善されなかった。次>に封入剤に注目し、4種類の封入剤を用い標本を作製し経時的に退色の検討を行った>ところ、興味ある結果を得たので報告する。
【方法】通常の方法で固定、包埋した消化管内視鏡生検材料(食道、胃、大腸)を用いた。2μmの厚さで薄切し、通常の方法でHE染色、脱水、透徹、封入し標本を作製した。封入剤は、マリノ-ル(武藤化学),エンテランニュー(メルク),HSR(国際試薬)、EUKITT(O.Kindler, Germany)の4種類について検討した。標本は作製直後、作製後1カ月、3カ月、6カ月、1年で観察し、顕微鏡写真撮影により記録した。
【結果ならびに結語】作製直後では染色性に差異のない標本であったにもかかわらず、1カ月後にはEUKITT、エンテランニューで封入した標本に退色がみられた。また3カ月後にはマリノールで封入した標本にも退色がみられた。観察期間中、染色性が良好に保持されたのはHSRで封入された標本のみであった。他3種類の退色の程度はエンテランニュー>EUKITT>マリノールの順であった。これらの封入剤は染色液、有機溶媒、水などとの相性もあり、封入剤が退色の原因と一概に結論づけられない。しかし、我々の施設では封入剤をHSRに変えてから退色は改善され、現在のところ不都合は生じていない


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