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拡大デジタル画像による消化管腫瘍の病理形態学的検討
―特に、市販のデジタルカメラの解析法について―

木村文一(東大和病院病理細胞診断科)


【目的】近年、内視鏡分野における拡大内視鏡の出現以来、表層粘膜構造を詳細に観察できるようになり、消化器腫瘍の内視鏡的な診断精度向上には目を見張るものがある。しかし、拡大内視鏡は高額な機器であるため、まだ一部の大学病院や研究機関でしか使用されていないのが現状である。一方、外科病理学領域においても、大型の摘出臓器の撮影は日常的に行われているが、EMRやポリープ切除材料等の小検体のマクロ(アナログ)画像自体は切り出し図に利用されるだけで病理診断に寄与することは殆どない。今回、市販のデジタルカメラと小型撮影台を用いた小検体専用の撮影システムを構築し、消化管腫瘍を撮影後、得られたマクロ(デジタル)画像より表面粘膜構造の解析を行い、その有用性について検討した。
【材料および方法】EMRにより得られた消化管腫瘍282例を市販のデジタルカメラ(RICHO Caplio RR1)と小型の撮影台(SFCマイクロスタンドMK-Ⅱ)を用いて写真撮影を行った。また、得られた拡大デジタル画像を病理組織像と比較・検討した。
【結果・結語】症例の内訳はhyperplastic polyp 15例、serrated adenoma 2例、tubular adenoma 206例、tubulo-villous adenoma 33例、Carcinoma in adenoma 8例、tubular adenocarcinoma 9例、tubulo-villous adenocarcinoma 1例であった。拡大デジタル画像の解析でも内視鏡観察でも報告されている通り、過形成病変、腺腫、腺腫内癌、腺癌の順で、陰窩構築(ピットパターン)の多様な改変が確認出来た。本法を用いることより、病理領域では得ることの出来なかった消化器腫瘍の表層粘膜構築の詳細を見ることができ、病理形態診断に資することが大と判断された。その他、コンピュータに保存されてデータは簡単に印刷することが出来、像は手書きの図やコピーなどと比べ鮮明で、手間がかからず、ローコストかつ迅速な検体処理が可能であった。


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