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腎臓以外のPAM染色
-循環器(おたく)病理医の要求-

田村 浩一
日本医科大学付属病院病理部


PAM染色=腎臓と考えていませんか?PAM染色は腎臓以外でも、特に血管病変を観察するのに有用な染色法です。なぜなら、内皮細胞、中膜平滑筋の状態や線維化の有無が把握しやすいだけでなく、出血や壊死により不明瞭となった部位の血管も観察可能になるからです。今回、病理学総論に立ち返り(えーっ、そんなの忘れたよ、と言わないで)出血についてPAM染色で検討してみることにしました。出血は大別すると血管壁が破れて起こる破綻性出血と、血管壁に見るべき破綻がなくして起こる漏出性出血があったのを思い出して下さい。配布した標本は43歳女性で、心筋梗塞に対し再灌流療法を施した後に死亡した剖検例からのものです。実はこの症例で、心臓では梗塞による壊死部に血液が再灌流したことにより破綻性出血を生じており、肺では心不全による鬱血にショックが加わったことにより肺胞内に漏出性出血が起きています。皆さんはPAM染色により、これら2種類の出血を明瞭に示す事が出来たでしょうか?
われわれ病理医は1枚の標本でなるべく多くの情報を得たいと思い、技師の皆さんにいろいろ要求します。それに答えるのがプロ!なぁんて勝手な言い分かも知れませんが、以下が今回この検体のPAM標本に求める私の要求(ねぇ何とかして!お願い!)です。
1)出血の機序を明らかにしたい。(心筋内の静脈の破綻や、肺胞毛細血管から赤血球が漏れだす像を観察したい)
2)赤血球と、心筋細胞や肺胞上皮は簡単に色で見分けたい。
3)小血管における内膜障害や、壁の線維化の状態を観察したい。
4)もちろん心筋細胞や気管支上皮に関する所見も取りたい。
5)筋性動脈の中膜で、平滑筋細胞の状態を観察したい。(この部の基底膜が網目状に美しく見えるかどうかはPAM染色の出来上がりを見る時の目安になります)

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