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ケルンエヒトロート液作製法の検討

国立病院東京医療センター病理検査室
當銘良也、山田晶、佐久間武史


はじめに
ケルンエヒトリート液は特殊染色の核染色として広く用られている。しかしながら作成後の保存液の耐久性に問題がありながらあまり検討されてこなかった。ケルンエヒトロートは同一分子内に正荷電のアミノ基と負荷電のスルホン基があり、さらに液作製後にはレーキ結合したアルミニウムが負荷電の状態で存在する。これらの正荷電基、負荷電基がお互いにイオン結合し徐々に沈殿を起こして染色性が悪くなると思われる。
今回我々は、これらの官能基を封鎖あるいは、色素自体の溶解性を高めれば染色液の耐久性を高めることができるのではないかと種々の検討を行った。
〔方法〕アミノ基の封鎖としてホルマリン、パラアルデヒド、 スルホン基の封鎖としてクエン酸、NNdimethyl m-phenylene diamine,NNdimethyl p-phenylene diamine,溶解性を高めるためにグリセリン、エチレングリコール、Ethyleneglycol monomethyle ether(EGME)を種々の割合で加え染色液を作製し、保存液中の沈殿の量および大腸と扁桃組織を用いて染色性の経時的変化について検討を行った。また原法では加熱溶解を行うが、作成法を簡素化する目的で加熱法とスターラーで1晩攪拌する非加熱法の比較検討も行った。
〔結果〕ホrマリン、パラアルデヒド、クエン酸、NNdimethyl m-phenylene diamineは液作製後1週間くらいから沈殿の形成を認め、染色性も1週間後くらいから悪くなり耐久性を高める効果はなかった。NNdimethyl p-phenylenediamineは沈殿形成を防止する効果を認めたが、染色性が徐々に悪くなった。グリセリンとエチレングリコール10~20%で、Ethyleneglycol monomethyleether(EGME)10%添加した時、保存時の沈殿形成も少なく、染色性の耐久性を高める効果を認めた。徐々に染色性は悪くなるが1年程度は使用可能と思われた。加熱法と非加熱法の比較では、保存時の沈殿形成、染色液の耐久性もあまり変わらなかったが、非加熱法では、加熱法に比べて細胞質や結合織への着色がやや見られた。対照とした原法では作製後1週間より徐々に沈殿形成を認め3ヶ月後には多量の沈殿物を形成した。染色性も作製直後から徐々に染色性の低下を認めた。3ヶ月くらいまでは使用可能であったが、1年経過した染色液は使用に耐えられなかった。
〔まとめ〕染色液の耐久性を高めるために種々の検討を行った。色素分子間の結合を防ぐために用いた試薬の添加は効果を認めなかったが、色素の溶解性を高めるために用いたグリコセリン、エチレングリコール、EGMEで効果を認めた。また、作製法を簡素化する目的で検討した非加熱法では、加熱法に比べてわずかに背景への着色を認めたが実際の染色には問題はないと思われた。


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