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子宮頸部の病理と細胞診 -病態を基盤にした子宮頸癌の新分類-

柳井広之

岡山大学病院 病理診断科


 これまで子宮頸癌は組織形態により分類され,様々な診断上の用語が用いられてきた。1983年にHPVが子宮頸癌の組織から分離され,やがて発癌にどのように関与しているかが解明されるとそれまで用いられた用語の見直しが迫られるようになった。その最初が細胞診におけるベセスダシステムである。
 2020年に発表されたWHO分類第5版では子宮頸癌の分類はHPVの関与の有無を反映させたものとなり,扁平上皮癌,腺癌のいずれもHPV関連とHPV非依存性の2つに分けられることになった。HPVの関与については組織標本上でHPVのDNAあるいはRNAをin situ hybridization (ISH)を用いて検出するのが確実であるが,手技が煩雑であり,コスト面からも日常診療に用いることは難しい。HPVによる腫瘍化の結果としてみられるp16INK4の過剰発現を免疫組織化学 (IHC)で検出することは多くの病理検査室で実施可能であり,代替マーカーとして広く用いられている。
 扁平上皮癌ではHPVの有無による組織像の違いが明瞭ではないことからISHもしくはp16 IHCによる検査が必要であるが,腺癌については,核分裂像やアポトーシスが低倍率の観察で容易に確認できる場合はHPV関連と判断して良いとされている。HPV非関連腺癌はさらに胃型,明細胞型,中腎型に分類される。類内膜癌の呼称にはHPVとの関連が付記されないが多くはHPV非依存性と考えられており,子宮体癌との鑑別が必要になる。また,漿液性癌,すりガラス細胞癌などの呼称が分類から外されている。


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