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帝京大学病院における病理診断結果報告の既読管理の実際

向山淳児

帝京大学附属病院


 病理診断結果報告の見落としは、重度の医療事故につながる可能性があることから、病院全体として取り組むべき案件である。当院では、2013年4月病院長直轄組織である安全管理部主導のもと、当時用いていた病理部門システムに搭載された既読確認機能を利用した管理をスタートした。病理診断をオーダーした依頼医が病理診断結果報告を閲覧した際に、電子カルテの同一画面内に表示される確認ボタンを押す操作によって、病理部門システム内で未読から既読に変換されるという簡単な流れである。毎月末に病理部にて未読状態の病理報告をリストアップし安全管理部に提出、安全管理部はこのデータを依頼科ごとに整理して、臨床科長、リスクマネージャー、診療実務者による各種会議および各依頼科へ未読状況を報告し、注意喚起を行った。しかし現実的には、必ずしも全ての依頼医が既読確認ボタンを押すわけではなく、診療担当医が変更したり、他科からの依頼案件である場合などではむしろ押下を躊躇する動きもみられるなど、なかなか未読件数が減らず、蓄積する傾向にあった。さらに既読確認ボタン機能の不具合もあり、頻回のシステム修正を余儀なくされていた。
 上記の状況を踏まえ、2018年5月病理部門新システム導入時には、既読管理機能を念頭においたシステムの選定が行われた。新システムでは、病理診断オーダー時に2人の「既読責任医師」の登録が義務付けられ、依頼医を含めて3人まで登録可能となり,登録された医師のうちの2人が既読した時点で病理部門システム内での既読が成立する。これにより、例えば血液内科から内視鏡科に依頼された胃生検など他科からの依頼案件や、内科から外科へ転科した場合等に起こり得る未読は,両科の医師を登録することで防ぐことができ、また診療担当医の交替にも対応可能となった。既読責任医師は,閲覧すべき病理診断情報を,個々の患者のページを開くことなく、ホーム画面からリストの形で確認でき、各々の閲覧が終わらない限り、未読分としてリストに残り続ける仕様とした。
 管理側の運用としては,診断日より3週以内、3週を越え8週以内、8週を越えるものの3段階に分けて毎月集計し,各種会議および各依頼科へ報告して閲覧を促し、8週を越えても既読にならないものについては病院長へ報告、病院長から担当医へ注意・警告を行う流れが確立されている。
 当院における病理診断報告の既読管理は,当初より安全管理部が主導する形で進められてきており,紆余曲折ありながらもようやく確立しつつある.今回のような機会に、他施設の取り組みについてのご発表やアンケート結果を伺い,一層効果的・効率的な仕組みの構築を模索したい。


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