■ プログラム

HOME > 例会抄録 > 第108回日本病理組織技術学会 > 渡辺の鍍銀法の変法について

渡辺の鍍銀法の変法について

鈴木美那子

慶應義塾大学医学部 病理学教室


 鍍銀染色はBielschowsky(1904)が銀の錯体を用いて神経線維染色を発表しことにはじまり、いくつもの変法、改良法が考案され今日に至っている。現在、鍍銀染色は主に好銀線維(細網線維、格子線維)染色として一般的な特殊染色として知られている。渡辺の鍍銀法は、本会の創設者のひとりである渡辺恒彦先生が1959年に発表された方法で、その安定した染色性から多くの施設でこの渡辺の鍍銀法が採用されるに至っている。
 銀の錯体を用いる染色では、核や細胞質への共染が問題になることがあり、渡辺の鍍銀法においても例外ではない。共染が著しい場合は、後染色の染色性を阻害し、網状の細い繊維の観察の妨げになる。銀液による共染防止策としては、銀メセナミン錯体を用いたPAM染色において、銀液にゼラチン添加することが知られており、鍍銀染色に応用している施設もある。
 今回発表する変法は、ゼラチン添加などの共染防止策に類似した内容であるが、当教室の先輩方が講じた簡便で効果的な方法である。それは、作製した鍍銀保存液に僅かなウシ血清アルブミン(BSA)を添加し、染色時に希釈して使用する方法である。BSA添加鍍銀液は、核や細胞質への共染を抑制する、簡便で優れた染色液である。保存液の特徴は、余分な銀化合物がBSAに吸着して茶色に変色することであるが、それでも問題なく数か月間の保存が可能である。
 本講演では鍍銀染色の歴史に触れるとともに、BSA添加後の経過日数に対する染色性の結果をはじめ、鍍銀染色の共染に関する知見をまとめた。


例会抄録一覧へ戻る