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髄鞘染色「ウエルケ染色法(凍結試料用)」のパラフィン切片への応用

羽賀千恵1,原 弘也1,金井由美子1,多田美紀子2,関 絵里香4
小島利香4,池田研二5,城倉 健1,2,秋山治彦3

1横浜市立脳卒中神経脊椎センター臨床検査部,2同 脳神経内科,3同 臨床研究部,
4東京都医学総合研究所 分子病理・ヒストロジー解析室,5同 認知症プロジェクト


(目的)
 神経病理の古典的な髄鞘染色法である「ウエルケ染色法」は,髄鞘の染色選択性が高いという特徴があるが,凍結試料を使用するという制約がある。そのためウエルケ染色法をパラフィン試料用に改良し,その染色性をK-B染色法等と比較した。

(方法)
1.ウエルケ改良法(パラフィン切片用)試料は,おもに10μ厚の切片を用いた。
 ①脱パラフィン,精製水を通して
 ②2.5%鉄ミョウバン水溶液で媒染 2~4時間(それ以上でも可)
 ③精製水を軽く通して
 ④ウエルケ・ハイデンハイン液で約1時間~1時間15分ほど反応
  使用時調整 約100ml調整の場合
    5%ヘマトキシリン純アルコール溶液  10ml
    精製水               90ml
    飽和リチウム水溶液          5ml
      合計              105ml (攪拌は,約10分)
 ⑤流水にて10分間水洗。精製水を通して
 ⑥神経細胞染色 0.5%クレシルバイオレット染色液に10分間反応
  (必要であれば,95%酢酸アルコールで分別)
 ⑦脱水,透徹,封入

2.いくつかの疾患症例で連続切片またはミラー切片を作成し,ウエルケ改良法とK-B染色を行い比較した。また,髄鞘特異抗体の抗MBP抗体による免疫染色とも比較した。

(結果)
 ①ウエルケ改良法では,1) 髄鞘だけが染色されるため,KB染色で必要な分別が不要であった。また,2) 一日内で染色が可能であり,手技が容易で効率的であった。
 ②染色性の特徴として,髄鞘が選択的に染色されるので,髄質に加えて皮質の詳細な髄鞘の走行も明瞭に染色された。例えば,視覚野のジェンナリ線条もよく染色されていた。脱髄病変部位では,残存する微細な髄鞘も明瞭であった。

(結論)  ウエルケ改良法は,K-B染色法と比較して操作も容易でありルーチンの方法として有用である。


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