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術中迅速凍結標本作製における免疫組織化学染色に有効な固定液の検討

池田 聡
佐藤麻奈

土浦協同病院 検査部
サクラファインテックジャパン(株)開発企画部


【背景と目的】
近年、術中迅速組織診断に免疫染色を応用する施設が多くなっている。免疫染色は組織診の客観的裏付けができるので臨床家に連絡する場合にも確信をもってその診断結果を報告できる。また、免疫染色を迅速かつ確実に行うためのR-IHC(サクラファインテックジャパン)も販売されており、今後も免疫染色を取り入れる施設の増加が予想される。しかし、このように普及が見込まれる免疫染色ではあるものの、凍結組織切片に対する染色法は通常のパラフィン切片に対するものと異なり検討が十分行われていないのが現状である。昨年、当研究会で凍結組織診断についてのコンペを行ったところ、使用する機材、試薬等についてのアンケートでは各施設で独自に検討したものが用いられている現状が明らかになった。凍結切片に対し免疫染色を応用するにあたっては、その最適化については検討しなければならない様々な要因が予測される。特に、抗原保持に最も重要と考えられる固定液に関してはHE染色用に使用されるものをそのまま流用していることが多く、このため免疫染色しても抗体試薬がその効力を十分発揮できていないことも予想される。われわれは今回、術中迅速凍結組織診断に応用する場合に有効な固定液を検討したので報告する。
【材料と方法】
材料にはブタの胃、肝、大脳などの凍結組織切片、固定液にはアンケートで回答のあったアセトン、エタノール、ホルマリンなど10種類を検討した。凍結組織切片の作製にあたってはOCTコンパウンドで包埋し、ヒストテックピノを用いて凍結し、薄切はポーラーを用いて行った。検討する抗体にはブタ組織に反応することが確認されているサイトケラチン、GFAPを用いて検討を行った。また、染色に当たってはR-IHCを用いて一次抗体反応時間5分にて行った。
【結果および考察】
検討の結果、最も染色の感度特異度が良かったのは100%エタノールとホルマリン原液(37%ホルムアルデヒド)の等量混合液であった。また、これに酢酸を5%添加すると、しないものと比較して有意に効果的であった。そして、他の固定液では染色されなかったような抗原もこの固定液では十分な反応が得られることも確認できた。迅速組織診断においては主にHE染色で行われるが、HE染色ではどの固定液でもある程度は染色される。しかし、免疫染色ではその抗原保持に関して固定液の選択はもっとも重要な因子の1つと思われ、各施設の追試を期待するとともに迅速免疫染色のさらなる発展に期待したい。


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