3)『子宮癌術後残存/局所再発に対する腔内照射の治療成績』
目的
子宮全摘術後の腫瘍残存または局所再発に対する腔内照射を用いた放射線治療の有用性を後向きに検討した。
対象
1991-2012年に子宮全摘術後に腔内照射を施行した23例を調査した。年齢は39-86歳,中央値62.3歳。子宮頸癌15,子宮体癌6,肉腫1,悪性黒色腫1であった。
術後断端陽性・残存例が7例,膣断端部の局所再発が16例。
放射線治療前の腫瘍の厚みが0.5 cm以下が13例,2 cm以下が7例,2 cmを超えるものが3例であった。
5例に放射線治療歴があり,子宮頸癌根治照射が1例,術前照射が2例,術後照射が2例であった。
前治療(手術)から本治療までの期間は0-280ヵ月で,術後再発例での中央値は26.5ヵ月であった。
治療法
外照射併用が14例で照射線量は28.8-51.6 Gy,中央値は45 Gyであった。
腔内照射はCs-137を用いたLDRが19例,HDRが4例でCo-60が1例,Ir-192が3例。
アプリケータはタンデム型が12例,オボイド型が11例であった。
線量評価点はタンデム型ではアプリケータに接する膣側面の粘膜下5 mm,オボイド型はオボイド線源間の中点における膣断端部の粘膜下5 mmとした。腔内照射線量はLDR10-45 Gy(中央値30 Gy),HDR12-25.5 Gy(中央値24.2 Gy)であった。腔内照射単独症例(9例)での腔内照射線量はLDR40-48 Gy(中央値45 Gy),HDRは3例で各々23,25.5,30 Gyであった。
腫瘍の厚みが1 cmを超えるものは全例(7例)外照射併用されていた。(表1)
表1.
|
腫瘍厚 |
|
年齢 |
(平均) |
≦0.5 cm |
≦l cm |
>l cm |
外照射併用 |
39-86 |
(60.7) |
6 |
1 |
7 |
腔内照射単独 |
46-79 |
(64.9) |
7 |
2 |
|
治療成績
5年局所制御率は再発例で75%,術後残存(断端陽性)例で100%であった。5年全生存率は再発例で65.8%,術後残存(断端陽性)例で100%であった。(図1)
局所再発は4例で,その詳細を(表2)に示す。全例子宮頸癌で再発リスクとして考えられるのは腫瘍サイズが大きい(4 cm以上),腺癌,腔内照射のweightが低いことがあげられる。またHDRでの再発は腔内照射の照射線量が不足している可能性がある。
放射線治療歴のあった6例の詳細を(表3)に示す。いずれも重篤な晩期有害事象は認めておらず,前治療を考慮した照射線量では安全に治療可能であることが示唆される。
晩期有害事象はgrade1直腸出血1例,両下肢浮腫1例,grade 3の膣粘膜壊死1例であった。

図1. 5年全生存率(OS):再発例65.8%,術後残存(断端陽性)例100%,5年局所制御率(PFS):再発例75%,術後残存(断端陽性)例100%
表2. 子宮頸癌治療後再発4例の内訳
年齢 |
前治療 |
腫瘍size |
腔内照射 |
外照射 |
無再発期間 (生存期間) |
① 64 |
Ib 全摘 |
4 cm〜 |
LDR 10 Gy シリンダ |
51.6 Gy |
16 M (24) |
② 46 |
IV腺癌 化学績法+全摘 |
表在 |
LDR 20 Gy オボイド |
50.4 Gy |
9 (14) |
③ 79 |
? 全摘+術後照射 |
表在 |
HDR 23 Gy オボイド |
なし |
13 (68) |
④ 71 |
IIB 術前照射+全摘 |
厚み1 cm (4 cm) |
HDR 25.5 Gy シリンダ |
なし |
4 (12) |
表3. 放射線治療歴のある6症例の内訳
年齢 |
病期 |
放射線治療歴 |
腫瘍厚 |
照射線量 |
晩期有害事象 |
無再発期間 |
71 |
IIIB |
根治: 41.4 Gy+17.3 Gy |
5 mm |
45 Gy LDR |
なし |
41 M |
59 |
IIB |
術前: 23.4 Gy |
断端陽性 |
30 Gy+28.8 Gy LDR/EXRT |
なし |
17 |
71 |
? |
術後: 50 Gy |
<5 mm |
40 Gy LDR |
両下肢浮腫 |
60 |
60 |
IIB |
術後: 45 Gy |
6 mm |
45 Gy LDR |
なし |
16 |
71 |
IIB |
術前: 30.6 Gy |
10 mm |
25.5 Gy HDR |
なし |
4(再発) |
79 |
? |
術後 ? |
表在 |
23 Gy HDR |
なし |
13(再発) |
治療方針
アプリケータの選択は腫瘍部位が膣断端部に限局してあればオボイド型,膣側壁に浸潤があればタンデム型を使用する。
腫瘍の厚みが5 mm以下であれば腔内照射単独,5 mmを超える場合は外照射で腫瘍体積を減じてから腔内照射を施行。腫瘍体積が大きい場合は腔内照射を施行せず,外照射となるが,今後は画像誘導下でのSBRTやIMRTで線量の集中と増加を図る方向となる。
照射線量は腔内照射単独であればLDR,粘膜下5 mmで45 Gy程度,外照射併用であれば外照射40-50 Gy,腔内照射20-30 Gyが適当と考える。
HDRの場合変換係数1.73を用いているが,今回の結果からは評価点粘膜下5 mmで線量不足の可能性が示唆される。
LDRの腔内照射は現在行っていないのでHDRで腔内照射を行うこととなるが,今後は線量増加を検討する。