5.　宇宙旅行における歯科領域疾患ガイドラインの策定|Development of Guidelines for Dental Diseases in Space Travel

一般演題IV

5.　宇宙旅行における歯科領域疾患ガイドラインの策定

前田　初彦^1,8,9，吉田　幸弘^8,9，長谷川　義明^2,8,9，近藤　尚知^3,8,9，三谷　章雄^4,8,9，諸冨　孝彦^5,8,9，
長塚　仁^6,9，近藤　久貴^7,9，杉田　好彦^1,8,9，久保　勝俊^1,8,9

¹愛知学院大学歯学部口腔病理学・歯科法医学講座
²愛知学院大学歯学部微生物学講座
³愛知学院大学歯学部冠橋義歯・口腔インプラント学講座
⁴愛知学院大学歯学部歯周病学講座
⁵愛知学院大学歯学部歯内治療学講座
⁶岡山大学学術研究院医歯薬学域口腔病理学分野
⁷愛知学院大学短期大学部
⁸愛知学院大学大学院歯学研究科未来口腔医療研究センター
⁹日本宇宙歯学研究会

Development of Guidelines for Dental Diseases in Space Travel

Hatsuhiko Maeda ^1,8,9, Yukihiro Yoshida ^8,9, Yoshiaki Hasegawa ^2,8,9, Naotomo Kondo ^3,8,9, Akio Mitani ^4,8,9,
Takahiko Morotomi ^5,8,9, Hitoshi Nagatsuka ^6,9, Hisataka Kondo ^7,9, Yoshihiko Sugita ^1,8,9, Katsutoshi Kubo ^1,8,9

¹ Department of Oral Pathology/Forensic odontology, School of Dentistry, Aichi Gakuin University, ² Department of Microbiology, School of Dentistry, Aichi Gakuin University, ³ Department of Prosthodontics and Oral Implantology, School of Dentistry, Aichi Gakuin University, ⁴ Department of Periodontology, School of Dentistry, Aichi Gakuin University, ⁵ Department of Endodontics, School of Dentistry, Aichi Gakuin University, ⁶ Department of Oral Pathology and Medicine, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama, ⁷ Junior College, Aichi Gakuin University, ⁸ Research Institute of Advanced Oral Science, Aichi Gakuin University, ⁹ The Japanese Society for Space Dentistry

【背景】宇宙旅行の実現に伴い，特定の歯科疾患を有する人が宇宙旅行を行う際のリスクが増加することが予想される。宇宙空間において，微重力環境や放射線の影響により，一部の歯科疾患が悪化する可能性や，痛みが発生しやすくなることが考えられる。宇宙旅行中に発生する可能性のある歯科疾患に対処するためのガイドラインを作成することは，宇宙旅行者の安全確保と健康管理に不可欠である。
　【目的】本研究では，宇宙旅行を行う際の歯科領域の疾患に関するガイドライン策定を検討する。宇宙空間で痛みが出やすいと考えられる歯科疾患を特定し，宇宙旅行が適さない歯科疾患を有する人に対するアドバイスや宇宙旅行中に発生する疾患に対処するためのプロトコルを考える。
　【方法】ガイドラインの策定に向けて，PubMed，MEDLINE，Google Scholar，Cochrane Library，医学中央雑誌を用いて，宇宙環境における歯科疾患に関する既存の研究を特定するためのシステマティックレビューを実施した。
　【結果】文献検索の結果，宇宙環境における歯科医療に関する研究が非常に限られていることが判明した。このためシステマティックレビューでの検討を断念した。そこで，宇宙環境での微重力環境や放射線の影響および閉鎖環境でのストレスなどを考慮して，現状の地球上での歯科疾患をもとにして宇宙旅行における歯科領域疾患ガイドラインを策定した。しかしながら，歯科医学の各分野の学会等にその専門の中での検討を行うことの必要性が示唆された。
　【結論】宇宙環境における歯科医療の研究報告が少ないため，一般人が宇宙旅行に際しての歯科領域疾患のガイドラインの策定は各専門分野の専門家の意見に基づいて行われる必要がある。また，宇宙での特定の歯科疾患の悪化リスクを想定し，予防策や治療方法の提案を考える事が重要である。さらに，宇宙旅行が適さないと考えられる歯科疾患を持つ人々に対するアドバイスや，宇宙旅行中に発生する疾患への対処プロトコルが喫緊に必要があることが示唆された。このガイドラインの策定は，宇宙旅行の未来に向けた重要な一歩である。宇宙旅行が一般の人々にとって現実となる中で，身体的な健康だけでなく，歯科の健康も重要な要素として考慮されるべきである。