宇宙航空環境医学 Vol. 62, No. 1, 26 2025

一般演題II

1. 短距離路線のパイロットが疲労を感じるプロセス−質的分析

澤本 尚哉

ALPA Japan

The Process of How Airline Pilots of Super Short Haul Flights Feel Fatigue ーA Qualitative Analysis

Naoya Sawamoto

ALPA Japan

【目的】 エアラインパイロットの疲労に関する研究は,時差を有する国際線等の長距離路線が主体であり,とりわけ1時間未満の短距離路線についてはほとんど明らかにされてこなかった。本研究では短距離路線に従事するパイロットが疲労を感じるプロセスについて質的手法を用いて調査することを目的とする。
 【方法】 日本の定期航空運送事業のうち,主に1時間未満の短距離路線を行っているターボプロップ機に乗務するパイロットを対象として,スノボール式のサンプリングを実施した。それぞれのパイロットに対して半構造化面接を実施した。インタビューの逐語録は修正グラウンデットセオリーを用いて,パイロットが疲労を感じるプロセスについて分析した。
 【結果】 合計3社,6人のパイロット(機長3名,副操縦士3名,年齢29-58歳)にインタビューを実施した。パイロットが感じる疲労は,短距離運航に特徴的な<短いブロックタイム><島嶼部特有の気象条件の悪さ><狭い範囲内での運航>などの要素に影響を受けた[リスク作業の繰り返し(多頻度運航)]によるところが大きかった。これらの作業は[質を伴う休憩の不足]に修飾されてパイロットの感じる[疲労]へと繋がっていた。
 【考察】 短距離路線に従事するパイロットに特徴的な疲労プロセスが明らかになった。疲労の観点から,勤務の設計にあたって推奨される事項は下記のとおりである。① 疲労が発生しやすい特定の空港(特に島嶼部)が複数入らないよう留意すること ② 便間に質の高い休憩を取るための十分な時間を設けること ③ 適切なブロックタイムの設定を行うこと ④ できる限りセクター数や飛行勤務時間を少なくすること。これらの配慮を行うことで疲労に繋がりにくい勤務が設計できる可能性がある。