宇宙航空環境医学 Vol. 61, No. 1, 24, 2024

一般演題 3

2. 急性の重力負荷が左室機能に及ぼす影響について~三次元心臓超音波検査を用いて~

平吹 一訓1,福家 真理那2,鈴木 里奈1,須田 智也1,畑 典孝1,植地 貴弘1,平澤 愛1
松田 剛明1,菅原 順3,柴田 茂貴1

1杏林大学
2筑波大学
3産業技術総合研究所

Effects of acute severe gravitational stress on left ventricular function evaluated by three-dimensional echocardiography

Kazukuni Hirabuki1, Marina Fukuie2, Rina Suzuki1, Tomoya Suda1, Noritaka Hata1, Takahiro Uechi1, Ai Hirasawa1, Takeaki Matsuda1, Jun Sugawara3, Shigeki Shibata1

1Kyorin University,
2University of Tsukuba,
3National Institute of Advanced Industrial Science and Technology

【背景】 起立耐性能力には圧受容器反射能に加えて心機能も密接に関連することがわかっている。我々は過度な重力負荷中に左室捻転運動が一回心拍出量および血圧の維持に重要な役割を果たすことを報告した。一方,重力負荷は圧受容器反射能の改善を通した起立耐性能力の向上に有効であると報告されてきた。しかし,重力負荷が負荷前後で左室捻転運動を改善させるかどうかは明らかになっていない。本研究は急性かつ過度な重力負荷が左室捻転運動を含む左室機能に与える影響について三次元心臓超音波検査を用いて明らかにすることを目的とした。
 【方法】 15名の健常男性(24±6歳)を対象に最大下肢陰圧負荷試験の前後で三次元心臓超音波検査を行った。15分間の安静後に三次元心臓超音波検査を行い,その後,下肢陰圧負荷を開始した。−15 mmHg,−30 mmHg,−40 mmHgの負荷をそれぞれ5分間行い,以降,3分毎に−10 mmHgずつ負荷を漸増していき前失神が誘発された時点で終了とした。試験終了直後に三次元心臓超音波検査を行なった。左室機能の測定項目は左室容量評価として左室拡張末期容量(EDV),左室収縮末期容量(ESV),一回心拍出量(SV)を,左室収縮機能評価として駆出率(EF),長軸方向ストレイン(GLS),円周方向ストレイン(GCS),捻転角度(Twist)を,左室拡張能評価として最大ほどけ速度(Peak untwisting rate)とした。
 【結果】 全ての被験者で前失神が誘発され,最大下肢陰圧負荷は−94±24 mmHgであった。バイタルサインについては最大下肢陰圧負荷後に収縮期血圧(前:122±13 vs. 後:125±15 mmHg, p=0.52, t検定),平均血圧(84±8 vs. 89±10 ml, p=0.09),脈拍(61±6 vs. 61±11 mmHg, p=0.90)は有意な変化を認めず,拡張期血圧(64±9 vs. 72±10 mmHg, p=0.04)は上昇を認めた。Peak untwisting rateは最大下肢陰圧負荷後に加速した(−164±95 vs. −126 ±51°/cm, p=0.038)。その他のEDV (106±18 vs. 101±15 ml, p=0.15),ESV (41±11 vs. 40±9 ml, p=0.29),SV (64±13 vs. 61±11 ml, p=0.22),EF (63±6 vs. 62±4 %, p=0.32),GLS (−18±3 vs. −20±4 %, p=0.055),GCS(−31±4 vs. −30±5 %, p=0.32),Twist (14±4 vs. 15±5°, p=0.16)では最大下肢陰圧負荷の前後で有意な変化を認めなかった。
 【結論】 本研究では最大下肢陰圧負荷の直後で左室Peak untwisting rateの加速を認めた。この所見はその他の心機能指標と違い,左室捻転解除運動のみが急性の重力負荷によって直ちに向上することを示唆している。さらには,重力負荷後に観察される起立耐性の増加に,左室捻転運動の向上が関与している可能性が考えられた。