宇宙航空環境医学 Vol. 60, No. 1, 39, 2023
一般演題 3
6. SIRIUS-21 月面基地環境を想定した精神心理シミュレーション試験 結果第一報
三垣 和歌子1,金井 宣茂1,笹原 信一朗2,道喜 将太郎2,塚田 武尊1,吴 移1,松浦 麻子1,3,
石塚 真美1,4,室井 慧5,池田 有6,池田 朝彦2,高橋 司2,堀 大介2,大井 雄一2,7,村井 正8,
松崎 一葉2,9
1筑波大学大学院 人間総合科学学術院
2筑波大学 医学医療系
3東邦大学 健康科学部
4淑徳大学 看護栄養学部
5筑波大学大学院 人間総合科学研究科
6大和ハウス工業株式会社
7しのだの森ホスピタル
8日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所
9筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構
Psychological effects in the space analog SIRUIS-21 (part 1)
Wakako Migaki 1, Norishige Kanai 1, Shinichiro Sasahara 2, Shotaro Doki 2, Hotaka Tsukada 1, Wu Yi 1, Asako Matsuura 1,3, Mami Ishitsuka 1,4, Kei Muroi 5, Tomohiko Ikeda 2, Tsukasa Takahashi 2, Daisuke Hori 2, Yuichi Oi 2,7, Tadashi Murai 8, Ichiyo Matsuzaki 2,9
1,5 Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba
2 Institute of Medicine, University of Tsukuba
3 Faculty of Health Science, Toho University
4 College of Nursing and Nutrition, Shukutoku University
6 DAIWA HOUSE INDUSTRY CO., LTD.
7 Shinodanomori Hospital
8 Nuclear Fuel Cycle Engineering Laboratories
9 International Institute for Integrative Sleep Medicine, University of Tsukuba.
本報告は,SIRIUS(Scientific International Research In Unique Terrestrial Station)において行った精神心理シミュレーション試験の結果第一報である。SIRIUSは,2017年に始まった国際プロジェクトであり,宇宙空間での心身の健康を守るための評価手法や技術の開発に向けて研究を行っている。2021年度に実施したSIRIUS-21では,モスクワの閉鎖環境において月面ミッションを想定した240日間の実験を実施した。当研究室は,閉鎖環境が及ぼす心理社会的影響についての客観的な評価手法を検討することを目的に,精神心理シミュレーション試験を実施した。
本研究で検討した手法および課題は次の4つである。①言語流暢性課題(Verbal Frequency Test:VFT)中のNIRS(近赤外光脳機能イメージング装置)による計測:NIRSとは,頭部に機械を装着し,脳血流中のヘモグロビン濃度の変化を計測するものである。VFTとは,前頭葉機能や言語機能を評価する神経心理学的検査である。一般的には,特定の課題に対して想起された単語数によって機能の評価を行う。本研究では,特定の課題に対する単語を想起させ,課題中の脳血流をNIRSにより計測した。② ソシオメトリックテスト: 自記式質問紙により参加者同士の関係性を測定し,集団における個人の社会的位置と集団の凝集性の程度を評価する。③ 時間再生法:疲労度を定量的に評価する手法である。参加者は秒数が見えない状態で20秒経ったと思った任意のタイミングでボタンを押す。この作業を20回繰り返し,動揺度((標準偏差/平均値)2×100)を算出する。動揺度が高いほど疲労度が高いといえる。④NASA-TLX:精神的な作業負荷を測定するための自記式質問紙である。精神的要求,身体的要求,時間的要求,パフォーマンス,努力,フラストレーションの6つの下位因子で構成される。各項目について重みづけをし,作業負荷の平均値を計算する。
各課題について,入室前1回,入室中4回,退室後1回の計6回測定した。
現在,6回分すべてのデータを取得し,解析を進めている。解析結果については今後発表予定である。