症例報告
MDM2の遺伝子増幅とタンパク発現を示さない
血管内膜肉腫の剖検例
高尾ともよ1 仙波 玲美1 渡邉 昌俊2,3
白石 泰三1 広川 佳史2,3
(1桑名市総合医療センター病理診断科,2三重大学医学部付属病院病理診断科,
3三重大学大学院医学系研究科腫瘍病理学)
要旨: 80歳代女性。単純CTにて右肺に結節性病変を指摘された。これを契機に造影CTやPET-CTが施行され,肺動脈主幹部の腫瘍が発見された。右肺結節のCTガイド下生検では肉腫様の組織像を認め,臨床診断は肺動脈を原発とする血管内膜肉腫の肺転移となった。患者は腫瘍発見後5か月で死去された。剖検時,肺動脈内は茶褐色腫瘍で占拠されており,組織像は肉腫様であった。形態学的には血管内膜肉腫として矛盾しないが,本疾における特徴とされるMDM2の免疫染色における蛋白発現やFISHでのMDM2増幅の所見が得られなかった。
キーワード:Intimal Sarcoma, Autopsy, MDM2, CDK4
Intimal Sarcoma without MDM2 Amplification and Overexpression
Tomoyo Takao1, Remi Semba1, Masatoshi Watanabe2,3, Taizo Shiraishi1, and Yoshihumi Hirokawa2,3
1Department of Pathology, Kuwana City Medical Center
2Pathology Division, Mie University Hospital
3Department of Oncologic Pathology, Mie University Graduate School of Medicine
(論文受付:2024年3月14日)
(採用決定:2024年4月10日)