非腫瘍性腎生検の病理診断と病理技師に求めること
【質問事項】
1.腎生検の検体が小さいなど、あまりよくない状態に遭遇することがあります。臨床医と病理医の間に立つ技師としてどのような心掛けが良いのか、アドバイスをいただけますでしょうか。

2.κ鎖、λ鎖の蛍光抗体染色は、凍結切片よりパラフィン切片から染色する方が良いのでしょうか?

3.非腫瘍性腎生検の診断は、治療方針にどのような影響を与えるのでしょうか。


【回答】
1.時に小さな検体に遭遇します。小さな検体が採取される場合には様々な背景があります。解剖学的因子、疾患関連因子など原因は様々です。腎生検は最初の出来上がり標本から複数染色(HE、PAS、PAM、MT…)が連続切片で作製されることによって病理診断が報告されます。また、追加解析が必須となる場合が多々あります。小さい検体の場合には、追加解析困難な状況に陥ることを極力回避するために、 臨床診断、凍結切片での蛍光抗体法の結果を参考の上、未染色標本を最初の出来上がり標本と同時に複数枚作製することが推奨されます。

2.蛍光抗体染色は歴史的に凍結切片での評価が基本です。以前から、凍結切片内に糸球体が確認出来なかった場合、凍結切片が採取出来なかった場合において、救済方法としてパラフィン切片での検討が行われてきました(日本腎臓学会誌. 1985.04;27(4):393-408.など)。
軽鎖(κ鎖、λ鎖)も基本は凍結切片ですが、M蛋白関連腎症などでは、凍結切片ではMasked(仮面)状態「偽陰性を呈することが報告(Kidney Int.2015.88(4):867-73.など)されています。κ鎖、λ鎖のパラフィン切片蛍光抗体染色が必要な場合は、M蛋白関連腎症が臨床上ないし光顕所見で疑われる症例において、①凍結切片が陰性(仮面状態)の場合、②凍結切片の染色態度と血清M蛋白でのκ鎖、λ鎖の偏移状態が一致しない場合、さらには③電顕所見で結晶構造が観察されたにも関わらず凍結切片が陰性の場合(パラフィン切片蛍光抗体染色でも同定困難にはパラフィン切片での通常免疫染色[悪性リンパ腫の軽鎖制限を確認する状態])などが、対象です。

3.続発性腎疾患(高血圧性、糖尿病性)では降圧剤、血糖改善療法、SGLT2療法などの非ステロイド・免疫療法が施行されます。一方、IgA腎症での扁桃摘出・ステロイド療法、Lupus腎炎、移植腎のなどでは活動性(細胞性半月体、管内増殖、糸球体壊死など)の有無によってステロイド・免疫療法が種々選択されています。さらには昨今、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、C3腎症、IgA腎症、ファブリ病などにおいては、補体や原因物質に対する特異抗体療法等の導入が急速に増加しています。これらの新規薬剤は高額でもあり、非腫瘍性腎生検の診断が、悪性腫瘍の診断と同様に、治療方針さらには医療経済面も含め、大きく影響を与えつつあるのが現状です。

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