アミロイドの病理組織学的特徴
【質問事項】
1.(会場質問)アミロイド染色法でDFSを使用する場合,染色する技師が気を付けなければならないことはありますか.例えば陽性率が異なるなど.

2.一般病院で,特殊な抗体を保有していない施設において,アミロイド症を疑がった場合に必要な免疫組織化学,特殊染色のセットはどの様なものでしょうか.

3.市販のDFS染色液で染色した際に,膠原線維が豊富な部分に染色されることがあります.共染なのかアミロイドなのか悩ましい時は,どのように解釈すればよいでしょうか.

4.アミロイドAとの鑑別に過マンガン酸カリウム処理がありますが,コンゴーレッド染色の色合い自体も変わり,染色が難しく感じます.どのような考え方で臨めばよいでしょうか


【回答】
1 DFS,コンゴーレッド染色に共通する点として,標本の厚さが薄くならないように気を付けてください(特にコンゴーレッド染色).また,DFS染色をアミロイド沈着の有無のスクリーニングで用いることは問題ありませんが,本染色は偽陽性が多いことが知られているため,確定診断はコンゴーレッド染色で行うことが必須です.

2 免疫染色に関しては,抗プレアルブミン(トランスサイレチン)(clone EPR3219, Abcam),amyloid A(clone mc1, DAKOなど),Igκ(H16-E, DB Biotech)抗体およびpolyclonalの抗β2-ミクログロブリン抗体は信頼性があり,これらを可能な範囲で購入し,運用すれば問題ないと考えております.Igλに関しては,現在信頼性のある抗体は市販されていません.抗原賦活化に関しては,我々の施設ではamyloid Aは賦活化なし,それ以外は98%ギ酸に1分間浸漬する手法で運用しています.なお,免疫染色標本をみる際には,必ずコンゴーレッド染色標本と比較することが重要です.もし,免疫染色結果がコンゴーレッド染色陽性部と乖離する場合(特に,免疫反応性を示す領域がコンゴーレッド染色陽性部より少ない場合),2種類以上のアミロイド沈着が合併している可能性が考えられます.
アミロイド沈着の有無を検討する際の特殊染色に関しては,コンゴーレッドやDFS染色に加えて,Masson trichrome染色とelastica van Gieson染色が有用と考えております.

3 DFS染色で膠原線維が陽性になっているように見える場合は,偏光観察下でapple-green調の複屈折性を示すことがあり,注意が必要です.HE染色でしっかりと観察すれば,アミロイド特有の“無構造”な沈着か否かの判定は可能と考えますが,慣れが必要です.鑑別には,Masson trichrome染色やelastica van Gieson染色が鑑別に有用です(前者ではアミロイドは灰青色/膠原線維は青色,後者では灰黄色/赤色を示す).

4 過マンガン酸カリウム処理は特異性が低いので,やらないでください.むしろ診断を混乱させます.


【追加のご発言】
 本邦では幸いなことに,アミロイドの病型分類を行うコンサルテーションシステムの体制が整っています.一方,コンサルテーションに出すには,アミロイド沈着を同定する必要があります.アミロイドの沈着の組織学的な定義は,コンゴーレッド染色陽性かつ偏光観察下で緑色調の複屈折性を示すことであるため,コンゴーレッド染色は必須であることを再確認していただきたいと考えております.免疫染色に注目が集まり,特殊染色を行う頻度が低下しているように思われますが,アミロイドの組織学的診断には現在でも特殊染色が必須なのです.この点に関しては,我々病理医は技師の皆様の染色技術に頼るしかありません.コンゴーレッド染色は煩雑かつ繊細な染色であり,施設ごとにプロトコールの微調整が必要になると思いますが,あまり染色性に自信がないという施設では,この機会に再検討していただければと思います.

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