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試薬の管理

塚本龍子

神戸大学医学部附属病院 病理部


 化学物質の管理は、購入から廃棄に至るまで異なる法律により規制されており、毒物及び劇物取締り法、化学物質の審査及び製造棟の規制に関する法律、労働安全衛生法、水質汚濁防止法、消防法や関連する政省令、告示・通達のなど多岐にわたり、労働環境下における化学物質の管理では、主に労働安全衛生法、毒物劇物取締法により規制されている。
 しかしながら、これまでの化学物質規制では、化学物質を取り扱う事業者は法令で定められた限られた化学物質に対してのみ個別的な措置義務を果たし、対象とならない化学物質について安全性の評価が十分に行われずに使用され、労働災害が発生するという事例が多く発生していた。そこで厚生労働省は、化学物質による労働災害を防止するため、個別規制から自律的な管理へ方針を転換し「化学物質による労働災害防止のための新たな規制」として労働安全衛生規則等の一部を改正された(令和4年厚生労働省令第91号)。
 主な項目は「情報伝達の強化」「リスクアセスメント関連」「実施体制の確立」「健康診断関連」「特化則等関連」等であり、令和4年5月31日に公布され、令和5年4月1日から段階的に実施され2024年4月1日より全面的に施行されている。今回の改正では、規制対象物質が危険有害性が確認されている物質すべてに拡大され、令和8年4月には約2300物質となり今後も危険有害性物質が追加されることになる。
 我々病理標本作製に関わる試薬の多くがその対象物質となっており、この「化学物質による労働災害防止のための新たな規制」に則った自律的な試薬の管理について説明する。


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